そのコミュニティでは、ホームレス状態の方、生活困窮者、うつ病などの社会的困難を抱えた若者や支援者、散歩のついでに立ち寄った地域住民の方などが参加し、子どもから60代まで、年齢や肩書を越えて一つのボールを追いかける風景が日常になることをイメージした。現在では、ホームレスの人にとどまらず、若年無業者、うつ病、LGBTなど様々な社会的困難・背景を持つたちを対象としたフットサル交流「ダイバーシティカップ」の活動がなされている。これらの関係組織が、今回のホームレス・ワールドカップ日本代表の基礎になっている。
スポーツには、プロやオリンピックなどの「競技スポーツ」、学生時代に勤しむ「教育スポーツ(体育ではない)」、それらを応援する「観るスポーツ」など、いくつかの整理があるが、世界にはもう一つ「社会課題を解決するスポーツ」がある。
ボール一つあれば誰でもできるサッカーは、貧困地域の再生や社会的弱者の包摂策に多用されており、日本でも人間関係や自尊感情の回復ツールとしてホームレスはもとより精神障害やひきこもりの支援、さらには児童養護施設、薬物依存回復施設など様々な現場で人知れずサッカーが活用されている。
ホームレス・ワールドカップのキャッチフレーズは、「a ball can change the world.」であり、20年の活動を通じて、「社会課題を解決するスポーツ」を目指してきた。ワールドカップを晴れの舞台とし、世界各国に次々に誕生した派遣団体の活動を含め、これまで世界数百万人のホームレスの人生にポジティブな影響を与えてきている。
日本が見落としているスポーツの可能性は、いまだにたくさんあると感じた韓国大会だった。
参考:報道されない「ホームレスサッカー」という大実験 Forbus JAPAN 2017年8月29日
連載:「想定外」の研究
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