宇宙

2024.10.28 18:00

700光年先の宇宙空間で「大暴れする連星系」ハッブル望遠鏡が撮影

米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した連星系「みずがめ座R星」の壮大な画像(NASA, ESA, Matthias Stute , Margarita Karovska , Davide De Martin (ESA/Hubble), Mahdi Zamani (ESA/Hubble))

30年以上の観測実績を誇るハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、何ともすごいものを撮影した。目を見張るようなこのHSTの最新画像に写っているのは、宇宙空間で大暴れしている連星系「みずがめ座R星(R Aquarii)」だ。荒れ狂う色鮮やかな星雲から、ガスのフィラメントが渦巻き状に伸びている。HST運用チームは、16日付の声明で「恒星から噴き出しているこのねじれたガス流によって、この領域はまるで芝生のスプリンクラーが暴走しているように見える」と述べている。

みずがめ座の方向約700光年の距離にあるみずがめ座R星は、特殊な二重連星系だ。連星を構成する星の1つは、一生を終えつつある巨大な明るい星の赤色巨星で、直径が太陽の400倍以上ある。HSTチームはこの星について、脈動している「肥大化した超巨星」で、ピーク時の光度が太陽の5000倍近くに達すると説明している。連星系のもう1つは白色矮星で、一生を終えた星の小さくて高密度の中心核だ。赤色巨星と白色矮星の組み合わせの連星系は、共生星として知られている。

赤色巨星と白色矮星は、爆発性の関係にある。「44年の公転周期の間に、白色矮星が赤色巨星に最接近すると、重力によって水素ガスを吸い上げる」とHSTチームは説明する。「この物質が白色矮星の表面に蓄積し、ついには自発的な核融合を起こして、表面全体が巨大な水素爆弾のように爆発する」という。このようにして今回の画像にある燃えるように輝く物質の、乱れた環状構造が形成される。

HSTは、NASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同プロジェクトだ。1990年の打ち上げ以降、長年にわたりあらゆる種類の技術的問題を乗り越えてきた。宇宙望遠鏡としては古参だが、宇宙の観測によって収集した重要なデータと画像を地球に送信し続けている。NASAは今年、HSTを新しい運用モードに移行させた。ジャイロスコープ(姿勢制御装置)の1つに関する不具合の再発を回避するためだ。この調整により、2030年代に入るまでHSTを稼働させ続けられると、NASAは期待している。

HSTは数十年にわたり、みずがめ座R星の観測を続けている。連星系の2014年~2023年の漸進的変化を捉えたタイムラプス動画を、ESAが公開している。動画では、明るさの変化と、星雲が時間とともにどのように変わるかを見ることができる。



みずがめ座R星について研究者は、派手な言葉を使って「銀河系一の暴れん坊な星の1つ」や「星の火山」などと呼んでいる。みずがめ座R星は、まるで芸術作品のようで、ガラスのビー玉の中にある渦をのぞきこんでいるかのようだ。だが実際には、星雲は非常に大きい。「その規模は、天文学的に見ても並外れている」とHSTチームは指摘する。「宇宙空間にまき散らされた物質は、連星系から約4000億km以上の距離まで跡をたどることができる。これは太陽系の直径の約24倍に相当する」

地球がある太陽系は連星系ではないが、みずがめ座R星は太陽の遠い未来を垣間見せてくれる。今から数十億年後には、太陽は最終的に赤色巨星になった後、崩壊して白色矮星になる。

今回のみずがめ座R星の驚くべき画像は、遠く離れた対象を詳細に観測し、経時的な変化を浮き彫りにするHSTの能力を証明するものだ。共生星のみずがめ座R星は、宇宙がどれほど活動的である可能性があるかを示している。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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