日常を豊かにする滋賀発・KINTO 機能美とニッチを極めて海外でファン獲得

KINTO定番の「UNITEA」は、繊細なイメージのあるガラス茶器を日常でも使いやすくした

「使い心地と佇まいが調和するものづくり」を掲げ、生活道具を手がけるKINTOの商品は、ヨーロッパや北米、アジア各国に広がり、熱い支持を得ている。グループ全体の海外売り上げは、2013年から10年で10倍以上増加。その比率はグループ全体の半数近くを占めるまで成長した。海外販売網を広げるべく、16年にオランダにヨーロッパ子会社を、19年にはアメリカ子会社を設立し、23年末にはニューヨークのブティック街に旗艦店をオープン。そんな日本発ブランドを広めるのが、チーフブランディングオフィサーであり、KINTO USA/EUのCEOを務める小出慎平だ。

 小出慎平|KINTO チーフブランディングオフィサー小出慎平|KINTO チーフブランディングオフィサー

定番商品である耐熱ガラスのティーウェア「UNITEA」のティーポットは、ふたと茶こしが一体となり、パーツが少なく無駄を省いたデザインで、手入れが簡単。どんな空間にもなじむように機能美を追求した。近年はステンレス製のタンブラーや樹脂製ボトルも人気だ。

海外の顧客を増やしたきっかけとなるコーヒーウェア「SLOW COFFEE STYLE」もミニマルなフォルムが特徴で、ハンドドリップで淹れたコーヒーをゆったりと味わう時間を大切にという思いを込めた。小出は「日本人は丁寧な暮らしやおもてなしの精神を大切にしたいと思う人が多い。海外では物がいいというだけでなく、そういった精神性も含めて評価されているのでしょう」と語る。
ニューヨーク・ノリータ地区にあるKINTOのブランドストア は、ロサンゼルスに続き、北米2店舗目の発信拠点だ。

ニューヨーク・ノリータ地区にあるKINTOのブランドストア は、ロサンゼルスに続き、北米2店舗目の発信拠点だ

1972年に滋賀県彦根市で食器の卸売業として創業し、2000年から自社ブランドを展開する同社。小出は、米系消費財メーカーでブランドマネジャーを経て、19年に父が代表を務めるKINTOに入社した。現地在住のスタッフを採用し、日本発のライフスタイルブランドの思想を浸透させていく。「組織づくりに時間はかかるけれどブランディングを海外でも成功できている要因」だと考える。ブランド設計で重視するのは、マーケットのある消費者ニーズを測ったものづくりではなく「自分たちが素敵だと思えるものにこだわり、深いファンに届けること」。そして共感の輪を広げていく。

2023年春には本社を置く彦根市に「KINTO FARM」を開設。約1000平方メートルの畑で社員自らが試行錯誤しながら、ハーブや花などを育てており、商品企画などに生かす試みも始まった。小出はこう戦略を描く。「ローカルで小さいながらも日本のこだわりをもったものづくりで、世界の人たちに届けていく。規模を追求するのではなく、ニッチを極めて持続的に成長する『スモールグローバルブランド』を目指します」

【特集】世界を動かすカルチャープレナーたち
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文=督あかり

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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