近年は、九州にある焼酎の蔵元3社と「The SG Shochu」、沖縄の瑞穂酒造と新しいリキュール「KOKUTO DE LEQUIO」など、酒の開発も手がける。
きっかけは、2018年に渋谷にオープンしたバー「TheSG Club」で覚えた違和感だ。自らカウンターに立ち、外国人客のリクエストで“日本らしいカクテル”をつくっていたが、ベースに国産のウイスキーやジンを使用しても、どうもしっくりこない。どちらも日本で生まれたものではないからだ。
日本の蒸留酒といえば焼酎だが、アルコール度数、油分の高さ、麹の強いフレイバーも、バーテンダーにとっては使いにくい。「それなら自分たちでオリジナルの焼酎をつくり、世界に広げようと思いました。芋、麦、米の3種、ボトルも漢字を使わず洋酒のようなデザインに。一方でKOKUTO DE LEQUIOは、泡盛と黒糖業界が苦境に陥っていることを知り、そのふたつを組み合わせ使えば課題解決にもつながると考えてかたちにしたものです」。
日本は海外に比べて酒類提供に関する法的なハードルが低いため、酒の場がバーに限定されず、店も始めやすい。そのため小規模の個人経営バーが多く存在するという独自の発展を遂げてきた。「マスターが寿司屋の大将のようで、日本らしい」という良さもあるが、欧米のような規模のビジネスにはなりにくい。
しかし一歩引いてみると、「日本の酒文化の歴史はずっと長く、その種類も豊富」で、後閑は国内外の蒸留所を巡るなかで、日本の酒造りにほかの国には真似のできないレベルの高さを感じている。課題は、その発信だ。そこで場と知名度をもつ後閑は起点となれる。
バーづくりにおいて、後閑はよく空想をコンセプトにする。例えば、アメリカでカクテルに触れた遣米使節団が江戸時代にバーを開いたら──。すると、そこでは、空間やネーミングにも自然と日本らしさを交えて届けることができる。「『もしも』の世界を現実にするのは自由です。その力で新しい文化をつくることもできるのではないでしょうか」。