沈むハリウッド、日米コンテンツ産業逆転の理由

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ハリウッドが沈む一方で日本発コンテンツは米国で「空前絶後の大活況」となっている。その理由を紐解いて見えてきたものとは? エンタメ社会学者の中山淳雄が解説する。


日本コンテンツが大活況時代に入っている。ここ数年での日本アニメの躍進は周知の事実だろう。映像コンテンツの世界需要を見ると“ハリウッド離れ”が鮮明になってきており、「英語以外の言語の番組需要」が伸びている。

2018年は英語番組:非英語番組が8:2であったが、23年には6:4と半分近い比率まで伸びている(Parrot社調査)。ではその4割の非英語番組とは何かというと、韓国ドラマや欧州ドラマを差し置いて「日本語コンテンツ(≒アニメ)」がいちばん高いシェアを誇る。米国のZ世代の視聴者は、NFLのスーパーボウルを見るよりも「推しの子」や「呪術廻戦」を優先するようになっている。

日本アニメブームは約10年前の動画配信時代から、また日本ゲームブームは7、8年前に家庭用ゲームがサブスク化していった時代から加速した。しかし、こうしたアニメやゲームのお家芸以外でも「日本コンテンツ全体」が今ほど米国でもてはやされている時代はかつてなかったと言っていい。5年前のVTuberブームは米国大陸にも飛び火して、20年ごろから米国版のVTuber事務所が生まれている。XGや藤井風といったJ-POPが22年ごろから世界で聴かれるようになり、24年にはついに実写映画『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞を受賞した。

日本の戦国時代を舞台にしたDisney+配信の「SHOGUN 将軍」は、Disney脚本シリーズとして過去最高の6日間で900万回再生に到達した。エミー賞での25部門ノミネートは“歴史的快挙”であり(史上最多は19年「Game of Thrones」の 32部門ノミネート)、9月の発表時には新たな“お祭り騒ぎ”が生まれる確かな予感がある。正直ここまで複雑な日本の歴史ドラマが海外で視聴されている事実は信じられないほどだが、「米国を中心とした海外ユーザーの日本に対する熱量」をインバウンドで4000万人に到達しようとしている過去最高の旅行熱とあわせて実感している。

しかし、ここまでの一連の成功例は、果たしてコンテンツそのものの力だけで実現したのかと問われると、そこは少し立ち止まって考える必要があるだろう。

ハリウッドが見せた死角

ハリウッドは今「過去30年最も絶不調」状態に入っている。2020年3月のパンデミックで映画・TVの職業人口は全米で40万人から20万人へ半減、ハリウッド周辺(Greater LAエリア)で14万人強から9万人程度まで3割減の大リストラがあった。それが徐々に回復していき、23年初頭にはすっかり元通りになったのだが、2度目の危機が5月の「WGA(全米脚本家組合)/SAG-AFTRA(全米映画俳優組合)ストライキ」によって起こった。ストライキは脚本や俳優の演技にAIを使うことに対する是非や、ストリーミングに対して脚本家・俳優への二次使用料が還元されていないことなどへの不満が爆発し、ハリウッド全体を巻き込んだ騒動へと発展。半年間映画がつくれない状況に陥った。職業人口は再び9万人に急減した。
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文=中山淳雄

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