沈むハリウッド、日米コンテンツ産業逆転の理由

同年11月にストライキが解除されると、その後は賃金が倍額ほどに激増しており、「職場に戻れた人々」は一定の恩恵が得られたようだった。だが組合に所属しないフリーランサーはただ半年職にあぶれただけ。なにより職業人口が「9万人から増えない」のである。映画撮影が行われている数も22年から24年まで「減り続けている」状況で、とにかくハリウッドで制作される作品自体が回復していないのは間違いない。

コロナ禍前後における動画配信競争で疲弊したメジャー企業同士が「量より質だ」とコンテンツ投資を絞り始めた。ウォールストリートなど金融業界からの投資対効果に対するプレッシャーも大きくなっている。ストライキによって条件が上がった俳優や脚本家を使いたがらない。こうしたさまざまな理由が重なって、「30年成長し続けたハリウッド映画の終わり」が始まっているという声もある。

つまり日本コンテンツの大活況は米国ハリウッドの不況と隣り合わせなのだ。

『ゴジラ-1.0』は1954年の第1作から70年間生み出され続けた37作目であり、実写版『ONE PIECE』は1997年から25年の歳月をかけたファンと作家の関係性の上に築かれた副次的成功でもある。いずれもひとつのフランチャイズを、何十人という監督やプロデューサーが継承しながら、時には運営主体の企業すら変わりながら、「形」が残され続ける。

結局ポップカルチャーであっても、日本は「伝統と継承」という魂を忘れない。個々が協調的・融和的にすりあわせをしながら、全体が恒久的に保存・継続している。確かなことは、日本コンテンツの特徴がコロナを経た新時代の世界的なプロトコルにちょうどフィットしているということなのだ。

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中山淳雄◎東京大学大学院修了。リクルートやDeNAなどを経てバンダイナムコスタジオ、ブシロードで、メディアミックスIPプロジェクトなどを推進し独立。実業家と研究者、作家、制作アドバイザーを兼任。Re entertainment代表取締役。

文=中山淳雄

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