2024年4月、私は経済産業省クールジャパン政策課(現・文化産業創造課)と、日本のブランド力についての定性調査を、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、シンガポールの5都市で行った。この「海外需要拡大事業(国際競争力強化に向けた日本ブランド力に関する調査研究事業)調査研究報告書」で見えてきた日本文化のポテンシャルについて紹介したい。
もともと日本のソフトパワーは世界的に評価が高く、データ企業「イプソス」の国家ブランド指数では2023年度に1位になっている。また、好日度調査でも2015年と比較すると欧米文化圏の国において大きく上昇している。では、日本は具体的にどのようなイメージをもたれているのか?
日本のイメージとして出てくるカテゴリーは極めて多様だ。富士山、京都、相撲などの伝統的なイメージについて言及する人もいるが、アニメ、漫画、ゲームは大衆文化として受容されている。
また、日本食は世界でもヘルシーで、サステイナブルでクリエイティブな食として評判になっており、海外における日本食レストランの数は、2006年から2021年で世界で66倍になっている。日本食が広がるにあたって、酒やお茶などの飲み物も同様に広がり、その周辺産業がつくる包丁などの調理器具、あるいは文房具などが、その精密さと質の高さで注目されている。建築・インテリアの分野も「Japandi」という北欧と「和風」を統合したスタイルが登場。
工芸や、コムデギャルソンなどのハイファッションやユニクロ、無印などの定番ものに加えて、日本の古着の質の高さは評判が良い。さらには、訪日客が増え、日本の地方に足を運ぶ人が増えたことで、ニセコや白馬などの景観と、自然の中でのスポーツ、宿坊での宿泊体験、高野山、熊野古道、お遍路などへの訪問、そこでの精神性の高い体験を求める「無宗教型スピリチュアルSBNR(Spiritual but not religious)」といった、内なる精神世界も関心が高い。実際に訪れることでより解像度を上げる好循環が起きていると言っていい。