経済

2024.10.31 17:45

採用時最低時給は平均1167円、最低賃金を112円上回る

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政府は2030年代半ばまでに最低賃金の全国加重平均を1500円にしたい考えだが、継続的にどんどん賃金が上がっていくことに対して、いずれ限界がくることは目に見えている。そうした中、帝国データバンクは最低賃金改定に対する企業の見解について、全国の企業に調査を実施し、結果を公開している。

それによると、最低賃金と採用時の最低時給について、全体の平均は1167円となり、10月に改定された最低賃金の全国加重平均1055円を112円上回っていることがわかった。

業界別で見ていくと、「金融」「不動産」がともに1261円でトップ。「建設」が1249円、「サービス」が1208円、「卸売」が1175円と続いている。特にサービス業については、「情報サービス」が1374円、「専門サービス」が1313円と1300円を超え、逆に最低賃金を下回ったのが「旅館・ホテル」の1037円、「飲食店」の1051円となっており、300円以上の差がついている。

また都道府県別に見てみると、「東京都」が1340円で唯一1300円超え。続いて「神奈川県」が1277円、「大阪県」が1269円、「愛知県」が1205円、「千葉県」が1202円と、ここまでが1200円超えとなっている。

一方で、「青森県」が984円、「秋田県」が990円、「鹿児島県」が991円と1000円を下回っており、各都道府県で設定されている最低賃金はいずれも上回っているものの、差額は30円台と僅かに留まっている。

地域によって物価が違うので、格差が生まれることはいたし方ないが、業界によっても差があるため、その差を埋めることはなかなか難しい。企業からのコメントとしては「最低賃金の引き上げは仕方ないものと認識しているが、中小企業においては経費加算になる一方で、人員不足のままだと売り上げに響くばかりで不安でしかない」「役員報酬を下げて賃金を引き上げている」と苦しい現状を訴える一方で「最低賃金はもっと上げるべきで、賃金を上げられない企業は淘汰されるべきと考える。若者の賃金が低く、人口のわりに活気がない」「130万円の壁が変わらないなか、最低賃金ばかり上がって行くのは困る。労働者も労働時間が減るだけ、雇用者は人を増やさなければいけない」ともっと上げるべきだが、130万円の壁を懸念する声もある。

政府は、最低賃金の引き上げを続けるだけではなく、人手不足や価格転嫁への対応、社会保障制度の改定など、企業の経営状況がひっ迫しないような政策を打ち出していく必要があるだろう。

出典:帝国データバンク「最低賃金と採用時の最低時給に関する企業の実態調査(2024年9月)」より

文=飯島範久

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