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脱炭素経営ランキング20 気候変動対策をリードする企業とは

2024年10月24日発売の「Forbes JAPAN」12月号では、「新・いい会社100」特集と題して、全上場企業対象、独自調査・分析で作成した、「ステークホルダー資本主義ランキング」「自然資本ランキング」「脱炭素経営ランキング」「サプライチェーンランキング」「リスキリングランキング」などを紹介している。それぞれのランキング上位企業、計8社のCEOインタビューや早稲田大学商学部教授のスズキトモ氏、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏らのインタビューコラム等も掲載している。

世界各国で自然災害が相次ぎ、気候変動対策が待ったなしのなか脱炭素経営の推進は時代が求める「いい会社」に不可欠な条件だ。脱炭素と事業成長の両立に力を注ぐ企業トップ20を紹介しよう。



日本国内のみならず、世界各国で自然災害が相次いでいる。気候変動の影響を実感している人も多いだろう。温室効果ガスの削減が待ったなしのなか、大企業には科学的根拠に基づく環境目標を打ち立て、迅速かつ効果的な手を打ち続けることが求められている。

自社の強みや技術、アイデア、つながりをフル活用しながら脱炭素に取り組まなくては、株主はもちろん取引先や従業員、社会から否定的にとらえられる。脱炭素経営を強力に推進できるかどうかは「いい会社」に不可欠な条件であり、企業活動の命綱のひとつと言っても過言ではない。

そこで今回、Forbes JAPANは「売上高あたりのGHG排出量」「SBTi脱炭素目標の有無」をはじめとした6指標を用いて脱炭素経営に強い企業をランキングした。ランキング上位には、同業他社とも協力しながら、バリューチェーンの枠組みを超えて社会全体のCO2排出量の削減に取り組む企業が名を連ねた。ここでは上位20位にランクインした企業と、各企業の取り組みの一例を紹介しよう。

ランキング算出方法

調査対象は東証プライム市場の1644社。主に2023年度の企業の開示データを基にサステナブル・ラボが解析。スコアの算出には「売上高あたりのGHG排出量」「SBTi脱炭素目標の有無」をはじめとした6指標を用いた。業種ごとの相対評価で指標スコア(偏差値)を算出したのち、各指標に対してテーマや業種のマテリアリティを基に重み付けを行い、最終スコアを算出した。なお、小数点第3位以下の数値が大きい企業を上位とした。

脱炭素経営ランキング

1|アステラス製薬 

スコア|81.25

2050年までにScope1+2およびScope3それぞれのGHG(温室効果ガス)排出量90%の削減と、10%の残余排出量の中和化によるネットゼロ達成を目指す(いずれも15年比)。24年3月期の連結決算売上高は1兆6036億円(前年比5.6%増)。営業利益は255億円(同80.8%減)、純利益は170億円(同82.7%減)。

評価ポイント|再エネの利用推進や省エネ対策を進める。2023年度は約6億円を投資し、GHG気候変動対策に削減効果は4825トンにのぼる。Scope3の重要な排出源からのGHG排出にもS B T(Science Based Targets)を設定し、削減に取り組む点などが高評価につながった。24年3月期からはサステナビリティ指標を役員報酬に組み込んでいる。

2|ファーストリテイリング

スコア|81.17

ユニクロを展開するアパレル企業として、商品の生産から廃棄までを含む、事業活動全般におけるGHG排出量の把握と削減に取り組む。2023年8月期の連結決算売上高は2兆7665億円(前年比20.2%増)。営業利益は3810億円(同28.2%増)、純利益は2962億円(同8.4%増)。

評価ポイント|業界全体でパリ協定の目標実現を支援するための取り組みを定める「ファッション業界気候行動憲章」に署名し、業界全体の排出量削減をけん引。生産パートナーの排出量削減のために、個別工場のニーズに応じて再エネ設備などの導入に関する助言や、計画実行に必要な資金調達先を紹介するといった活動を行う点がスコアに良い影響を与えた。

3|アサヒグループ ホールディングス

スコア|80.05

「アサヒカーボンゼロ」を設定するとともに、バリューチェーンを超えて社会全体のCO2排出量削減に貢献できるよう「Beyondカーボンニュートラル」の目標を掲げる。2023年12月期の連結決算売上高は2兆7690億円(前年比10.3%増)。営業利益は2449億円(同12.9%増)、純利益は1640億円(同8.3%増)。

評価ポイント|2024年2月に従来掲げていた脱炭素目標の達成期限を10年早め、40年までにバリューチェーン全体でCO2排出量ネットゼロを目指すと発表。同年7月にはSBTネットゼロ認定を取得した。視座の高い目標設定や実効的な取り組みが高評価につながった。同業他社と連携した物流の効率化や、低炭素設備の導入などの対策も着実に進めている。

4|アスクル

スコア|79.74

エシカルeコマースを推進。脱炭素や資源循環など、定量的な30項目による環境配慮度をスコア化し商品ごとに掲載。2024年5月期の連結決算売上高は4716億円(前年比5.6%増)。営業利益は169億円(同16.0%増)、純利益は191億円(同95.6%増)。

5|DMG森精機

スコア|79.54

Scope1・2の排出量削減、Scope3目標の引き上げなど、積極的な取り組みがスコアに好影響。2023年12月期の連結決算売上高は5394億円(前年比13.6%増)。営業利益は541億円(同31.4%増)、純利益は339億円(同33.6%増)。

6|小野薬品工業

スコア|79.24

2025年にカーボンニュートラルを、35年に自社排出ゼロを目指す。23年度のScope1+2の排出量は17年の基準年比で46.2%削減。24年3月期の連結決算売上高は5026億円(前年比12.4%増)。営業利益1599億円(同12.7%増)、純利益1279億円(同13.5%増)。

7|ダイフク

スコア|78.36

「ダイフク環境ビジョン2050」の中で「気候変動への対応」を重点領域のひとつに設定。2030年目標はSBTiの認定済み。24年3月期の連結決算売上高は6114億円(前年比1.6%増)。営業利益は620億円(同5.5%増)、純利益は454億円(同10.2%増)。

8|エーザイ

スコア|77.96

2019年度からSBT2℃目標を掲げ3年連続達成。CO2排出量削減のためにICP(社内炭素価格)制度を導入。24年3月期の連結決算売上高は7417億円(前年比0.4減)。営業利益は534億円(同33.4%増)、純利益は424億円(同23.5%減)。

9|サッポロホールディングス

スコア|77.66

2030年のScope1〜3とFLAG(農業や林業、その他土地利用に関連するセクター)のScope1・3の削減を掲げSBT認定を取得。23年12月期の連結決算売上高は5186億円(前年比8.4%増)。営業利益は118億円(同17.0%増)、純利益は87億円(同60.1%増)。

10|アマダ

スコア|77.39

Scope3で特に製品使用時の排出量削減が重要ととらえ、エネルギー消費が従来製品比約3分の1となる製品への入れ替えを推進。2024年3月期の連結決算売上高は4035億円(前年比10.3%増)。営業利益565億円(同13.3%増)、純利益406億円(同19.0%増)。
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編集=瀬戸久美子 解析=サステナブル・ラボ イラストレーション=アンドレア・マンザッティ

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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