終身雇用が崩壊した昨今。キャリアチェンジが誰にとっても他人事ではなくなった時代に、徹底した顧客志向を武器に成長を続けているのがアサインだ。
同社は創業8年目を迎え、組織としての強固な基盤が築かれつつある。顧客管理やMAシステムなどは設計から開発まですべて内製化されており、エージェントが求職者との面談に集中できる環境が整っている。では、直接求職者と相対するエージェントはどのような考えのもと転職支援を行っているのか。同社のトッププレイヤーとして活躍する山林が教えてくれた。
徹底した選考対策が転職先の活躍につながる
アサインのキャリア支援にはいくつか特徴的な点がある。徹底した選考対策を行うのもそのうちのひとつだ。「現職で忙しいなか、転職活動に踏み出すのであれば、現職以外の選択肢を提示することがエージェントの役割だと考えています。内定をもらってはじめて、本当に転職すべきか否か自分自身のキャリアを真剣に考えることができます。最終的に現職に残る意思決定をしたとしても、内定獲得を通してよりキャリアに向き合い、今後の仕事への取り組み方に変化が生まれる。転職活動を通してそういった経験をしていただくためにも、内定を獲得するための選考対策は欠かせません」
山林が支援する求職者の内定獲得率は80％を超える。しかも、闇雲に何十社も応募することはなく、求職者のキャリアプランに合った企業のみを厳選して紹介するため、一人あたりの応募数は平均6～7社だと言う。では、なぜ行くべき企業から内定を獲得できるのだろうか。
「選考対策には私自身もそうですが、会社全体としても力を入れています。過去の内定実績データから、企業ごと、選考ごとの選考観点を分析し、求職者のこれまでの経験や強みから、一人ひとりオーダーメイドの選考対策資料を作成します。その資料をもとに、選考対策を複数回行うからこそ、高い内定率を実現できていると捉えています。
単純に内定獲得のためだけではなく、実は入社後の活躍のためにも選考対策は非常に大切な時間にもなります。選考対策を通して、なぜ転職をしたいのか、どういったキャリアを歩みたいのかなど、言語化していく過程でキャリアに対する考えが明確になります。だからこそ、転職後に取り組むべきことがクリアになりますし、何となくではなく、目的をもって転職することで入社後活躍しやすくなります。実際に私がご支援させていただいた方は、社内MVPを受賞するなど転職先で活躍されている方が非常に多いです。
また、そういった事前準備と同様に、求職者の方がモチベーションを維持できるかが大切です。現職で忙しいなか転職活動をすることは並大抵のことではありません。だからこそ、転職を通してかなうことやその先のキャリアについてできるだけ気持ちが躍るようなお話も面談のなかでさせていただくようにしています。二人三脚で進まなければ良い結果は生まれませんので、私が求職者の方以上の熱量で向き合うことも重要です」
組織全体で高品質のキャリア支援に挑む
一方、山林とは異なる立場で求職者に向き合うのが、最年少プレイングマネージャーとして活躍する新井だ。個人事業主のような働き方を採用する人材紹介会社も多いなかで、アサインはチームの力を生かすことで高い成果を生むと考えている。
「私一人で求職者に届けられる価値には限度がありますが、チームでキャリア支援に取り組むことで、より良い支援につながります。例えば、ひとりの求職者の方のキャリアについて、チームでディスカッションする候補者会議や採用企業の分析会、職種勉強会などをチーム単位で行っています。メンバーそれぞれに得意領域があり、バックグランドから知識や経験の濃淡もあるため、それを互いに補い合えます。それによって、より戦略性が高く、求職者の活躍を支えられるようなキャリアプランを提示することができます。
また、私がマネジメントサイドからもキャリア支援にアプローチしようと考えたのは、組織が拡大するなかでもエージェントの質を担保する、むしろ上げていかなくてはいけないと考えたからです。
さまざまなマーケティングやブランディング施策を通して、知名度が上がりブランドへの信頼やサービスへの期待も高まっています。しかし、日々求職者に向き合うエージェントのサービス品質が何よりも大切であり、それを向上させるという大切なミッションが私含めたマネージャーには求められています」
チームリーダーとしての役割同様に、新井は「伴走支援」の責任者という重要なミッションを担っている。
多くの人材紹介会社が転職をゴールに定めている一方、アサインは転職ではなく、中長期で求職者の目指すキャリアが実現されることを支援していると言う。アサインでは転職後の支援を「伴走支援」として、キャリアプランの見直しや転職後の活躍のサポートなど、転職を支援した方との中長期の接点を大切にする。アサインのエージェントが支援した方が、本当の意味で良いキャリアを歩めているか。そこに新井がオーナーシップをもっている。
「転職は目的ではなく手段です。環境を変えたからといって、求職者の方が描く将来像を実現できるわけではありません。転職後に、何を目標にどういうアクションを取っていくかが最も大切です。そのために、入社後半年ごとにキャリア面談を実施させていただいています。とは言え、転職後定期的にコミュニケーションの機会をいただくだけでは不十分だと思っています。外的環境や本人のライフステージの変化に合わせてキャリアプランを見直す必要もありますし、描いたキャリアプランの実現のために現職での活動に対するアドバイスや情報提供などご転職後もサポートすることは多岐にわたります。私は営業職の方のご支援が多いので、転職後成果が出ず苦戦されている方には営業のロープレをさせていただくこともあります。
勇気ある一歩を踏み出す支援を任せていただいたからこそ、あくまで実際にキャリアをかなえていくのは本人ではありますが、そこにコミットする姿勢が私たちにも求められると考えています」（新井）
エージェントは、転職支援がメインの業務であるというのが一般的な考えだろう。求職者がキャリアをかなえていくために伴走支援が必要であれば、それを形にしていく。アサインの取り組みは業界のスタンダードを変える挑戦と言えるだろう。
顧客価値のために何でもやっていく
組織が急成長するなかでもエージェント一人ひとりの活躍が何よりも大切であると同社は考えている。プレイヤーとしてトップを走ることで、より多くの求職者にキャリア支援を届ける人もいれば、マーケターや営業企画などエージェント以外のキャリアを拓き、その結果として求職者に還元することを目指す人もいる。自らの成長の先に事業の成長、ひいては顧客への価値提供につながると考え、常に顧客志向であることが同社の強みだと二人は口を揃える。「アサインには、キャリアの選択肢が多く存在しますが、私はずっとプレイヤーとして求職者に向き合い続けたいと考えています。それが、私が最も価値を出せることだと捉えていますし、私がトップレベルの成績を残すことで、社内で『もっと自分もできるのではないか』と考えるエージェントが増えると思っています。そういったエージェントが増えることで、結果的に求職者の思い描くキャリアの実現をサポートする『キャリア支援」をスタンダートに引き上げられると信じています。このエージェントという仕事をするうえで楽をしたいと思ったことは一度もなく、良いキャリア支援を届けるためなら、泥臭いことも何でもやっていきたいですね」（山林）
一方、若くしてマネジメントとしてキャリアを切り拓いた新井は今後のキャリアをどう描いているのだろうか。
「マネージャーの役割も担っているから、トッププレイヤーのような高い成果に向き合わなくていいわけではないと強く思っています。プレイヤーとしても自分の可能性に制限をかけずに高い顧客価値を出し続けたいです。
また、求職者から必要とされるという観点で、アサインを日本一にしたいと考えています。そのために現状維持ではなく常に新しい挑戦、発明を重ねていきたいと考えています。そういった大きな目標の実現に私のキャリアをかけるだけの意味があると思っています」（新井）
アサイン
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山林知紘（やまばやし・ちひろ）◎大手グローバル企業の人材開発室にて、海外事務所の組織開発を牽引したのち、採用プロジェクトのターゲティング戦略やパイプライン管理に従事。その後、アサインにヘッドハントされ参画。取締役直下として、採用戦略の立案から実行、入社後育成まで一貫して担いながら、若手ハイエンドに特化したキャリア支援を行う。現在はパートナー企業からのご依頼のもと、戦略的に重要な案件に対するヘッドハンターとしても活動。
新井聖人（あらい・まさと）◎大学卒業後、大手保険会社の営業企画職よりキャリアをスタート。新規顧客の成約率向上をミッションに、営業戦略の立案から実行までを一貫して経験した後、組織開発部門にて支援品質管理を担う。アサインに参画後は若手ポテンシャル層からミドル層まで幅広くキャリア支援に従事。社内最年少チームリーダーとして従事すると同時に、伴走支援事業の責任者も担う。
