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2024.10.25 11:30

ネイチャーポジティブ企業ランキング、自然と共存して成長を目指す20社

2024年10月24日発売の「Forbes JAPAN」12月号では、「新・いい会社100」特集と題して、全上場企業対象、独自調査・分析で作成した、「ステークホルダー資本主義ランキング」「自然資本ランキング」「脱炭素経営ランキング」「サプライチェーンランキング」「リスキリングランキング」などを紹介している。それぞれのランキング上位企業、計8社のCEOインタビューや早稲田大学商学部教授のスズキトモ氏、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏らのインタビューコラム等も掲載している。

水や大気、土壌など、自然の保全の概念を重要課題に位置づけ自社の価値創造につなげる「ネイチャーポジティブ」な企業はどこか。自然資本を生かしながら成長を目指す企業20社を一挙紹介する。



動植物や大気、水、土壌といった「自然資本」への関心が高まっている。「自然関連財務情報開示タスクフォース」(TNFD)は2023年9月、企業や団体が行う経済活動が自然環境や生物多様性にどのような影響をもたらしているかを評価し、情報開示する枠組みの最終提言である「v1.0」を正式に公開した。

日本では24年3月に環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が連名で「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を公表し、企業の価値創造プロセスで環境保全の概念を重要課題(マテリアリティ)として位置づける経営への移行の必要性や具体例を説いている。そこでForbes JAPANは昨年に引き続き、東証プライム上場企業の自然資本関連情報を収集・分析した。具体的には、「売上高あたりのGHG(温室効果ガス)排出量」「SBTi(Science Based Targetsイニシアティブ)脱炭素目標の開示」のほか、「環境技術関連の特許件数」「環境スチュワードシップ(水・森林)」など計15指標を用いて各社のスコアを算出した。ここではランキング上位20社を公開する。

ランキング算出方法


調査対象は東証プライム市場の1644社。主に2023年度の企業の開示データを基にサステナブル・ラボが解析。スコアの算出には「売上高あたりのGHG(温室効果ガス)排出量」「SBTi(ScienceBased Targetsイニシアティブ)脱炭素目標の開示」「環境技術関連の特許件数」「環境スチュワードシップ(水・森林)」をはじめ計15指標を用いた。業種ごとの相対評価で指標スコア(偏差値)を算出したのち、各指標に対してテーマや業種のマテリアリティを基に重み付けを行い、最終スコアを算出した。なお、小数点第3位以下の数値が大きい企業を上位とした。

自然資本ランキング

1|アステラス製薬

総合スコア|74.59

製薬会社。「責任あるサプライチェーンマネジメント」をはじめ9つのマテリアリティに優先的に取り組むことで、「最先端の『価値』駆動型ライフサイエンス・イノベーターへの変革」および「社会の期待に応える強靭かつ持続可能な事業活動の強化」を推進。2024年3月期の連結決算売上高は1兆6036億円(前年比5.6%増)。営業利益は255億円(同80.8%減)、純利益は170億円(同82.7%減)。

評価ポイント|ブリスターシートに植物由来の原料からつくるバイオマスプラスティックを採用する取り組みを開始。錠剤保護機能とユーザビリティの要件を満たす最適な製造条件を検討したうえで、独自の技術で開発に成功。2021年度から日本向け一部製品で利用している。従来の石油由来プラスティック製PTPシートからの切り替えにより、CO2の排出量を従来比約40〜60%削減できる点などがスコアに好影響をもたらした。

2|ソニーグループ

総合スコア|73.69

グローバルに事業を展開する電機メーカー。環境負荷ゼロ計画「Road to Zero」を掲げ、事業活動および製品のライフサイクルを通して企業としての責任を果たす取り組みを推進している。2024年3月期の連結決算売上高および金融ビジネス収入は13兆207億円(前年比18.6%増)。営業利益は1兆2088億円(同7.2%減)、純利益は9705億円(同3.5%減)。

評価ポイント|竹、さとうきび繊維、市場回収リサイクルペーパーなどを原材料にした、環境配慮型の紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」を独自に開発するなどの活動が高評価につながった。同素材を使用したパッケージはほかの紙類と一緒に回収可能。素材選びにおいては、生産者による産地での環境配慮も選定条件に加え、原材料の収集地は主要な製造拠点が集中するアジア圏に限定。調達時の輸送による環境負荷も低減している。

3|ダイフク

総合スコア|73.63

保管・搬送システムなどの物流関連機器を世界で展開。「スマート社会への貢献」「製品・サービス品質の維持向上」「経営基盤の強化」「人間尊重」「事業を通じた環境貢献」をサステナビリティアクションプランに掲げる。2024年3月期の連結決算売上高は6114億円(前年比1.6%増)。営業利益は620億円(同5.5%増)、純利益は454億円(同10.2%増)。

評価ポイント|「ダイフク環境ビジョン2050」を2023年5月に改定し、重点領域の拡充と30年の環境目標の引き上げを実施。12年から独自基準で製品の環境性能を評価・認定する制度「ダイフクエコプロダクツ認定制度」を運用するなどの環境配慮姿勢がスコアに表れている。23年5月時点で同社の83製品が同基準を満たしている。24年度からは環境配慮に加えて、より広い視点で評価する「サステナビリティ性能評価」を推進している。

4|明治ホールディングス

スコア|73.00

持続可能な酪農の実現に取り組み、牛乳におけるカーボーンフットプリント算定とJクレジット制度を活用したビジネスモデルを構築。2024年3月期の連結決算売上高は1兆1054億円(前年比4.1%増)。営業利益は843億円(同11.8%増)、純利益は506億円(同27.0%減)。

5|横河電機

スコア|72.08

中東の海水淡水化施設へのシステム提供など、さまざまなプロジェクトを通じてエネルギーを低減しCO2排出削減にも貢献。2024年3月期の連結決算売上高は5401億円(前年比18.3%増)。営業利益788億円(同77.4%増)、純利益616億円(同58.5%増)。

6|日産自動車

スコア|71.74

各国の生産拠点で水関連リスクアセスメントを実施。水不足のリスクが高い拠点では使用量の削減を推進。2024年3月期の連結決算売上高は12兆6857億円(前年比19.7%増)。営業利益は5687億円(同50.8%増)、純利益4266億円(同92.3%増)。

7|エーザイ

スコア|71.41

主要サイトを置く国ごとに、水の使用量削減のためにIWP(社内水価格)を設定するなど自然資本に配慮。24年3月期の連結決算売上高は7417億円(前年比0.4%減)。営業利益は534億円(同33.4%増)、純利益は424億円(同23.5%減)。

8|積水ハウス

スコア|71.29

CDPの「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」では国内住宅・建設業界で初となるトリプルA企業に選定。2024年1月期の連結決算売上高は3兆1072億円(前年比6.1%増)。営業利益2709億円(同3.6%増)、純利益2023億円(同9.6%増)。

9|トヨタ自動車

スコア|71.24

電気自動車の電池の3Rの仕組み構築や、水素タンク素材の再生利用技術の共同開発などに力を注ぐ。2024年3月期の連結決算売上高は45兆953億円(前年比21.4%増)。営業利益5兆3529億円(同96.4%増)、純利益4兆9449億円(同101.7%増)。

10|大成建設

スコア|71.20

需要が拡大する自然災害への対応・対策で強みを発揮。CO2排出量の削減などにつながる新技術を積極的に活用。2024年3月期の連結決算売上高は1兆7650億円(前年比7.4%増)。営業利益は264億円(同51.6%減)、純利益は402億円(同14.5%減)。
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編集=瀬戸久美子 解析=サステナブル・ラボ イラストレーション=アンドレア・マンザッティ

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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