こうした傾向が広がるなか、従業員たちは何を口に出して訴え、何をひそかに進めるべきか、判断しづらくなっている。
しかし「静かな退職」や「静かなハイブリッド」、さらには心の健康のために休む「メンタルヘルス休暇」や、忙しそうにして生産性が高いように見せかける「生産性劇場(productive theater)」といった現象は、まもなく過去の遺物となるかもしれない。職場に「アンハッピー休暇(unhappy leave)」という制度が登場し、支持を集めつつあるからだ。
この制度はもともと、従業員に非人道的な労働時間が課せられる状態を問題視した中国のスーパーマーケットチェーンが、年間に最大10日間の「アンハッピー休暇」を認めるようにしたことから始まった。
この休暇を取得する際に、詳しい理由の説明は要らない。管理職の承認も不要だ。この制度は「心の健康」を理由に仕事を休むことへの偏見をなくし、従業員が仕事のプレッシャーに対処しやすくするのを目的としている。最終的には、従業員のメンタルヘルスとウェルビーイングを向上させ、職場における士気、仕事に対するエンゲージメント、および生産性に良い影響を与えることを目指しているのだ。
「アンハッピー休暇」は、単なる応急処置か?
ビジネスコンサルティング企業のHogan Assessments(ホーガン・アセスメント)によると、「アンハッピー休暇」制度は、従業員がしんどさやストレスを感じたときに休暇を取れるようにすることで、職場でのエンゲージメント低下を緩和しようと企業が取り組む新たな解決策だ。しかし、米国におけるこうしたトレンドは、企業文化と従業員のニーズが一致していないことを示す兆候であり、より根深い組織の課題を浮き彫りにしている、と同社は指摘する。つまり、従業員たちの不満が大きくなっている状況に多くの組織が対処できていないというのだ。