──先日、ポッドキャスト「入山章栄の経営理論をイシューで語ろう/Business Insider Japan」を聞いていたら、入山先生が「宗教団体をつくった」と語ってらっしゃいました。池上彰さんとの共著『宗教を学べば経営がわかる』が発売されたばかりなので、新著の宣伝なのか、それとも本気で宗教団体をつくられたのか、どっちなのでしょう?
入山章栄教授(以下、入山):8月に設立手続きをして9月に認可された一般社団法人・世界標準の経営理論実践研究会のことで、実は僕は創設メンバーには入っていません。僕の位置付けは「教祖」になっています(笑)。
──神様ですか。
入山:経緯を話すと、ハーバード・ビジネス・レビューで4年ほど、著書の『世界標準の経営理論』について連載をしていました。連載中から経営者の方々を集めた勉強会が開かれるようになったのです。定員60名で、ダイヤモンド社の会議室での勉強会です。すると、皆さん、業界が違うから言語が違う。だから理論で抽象化すると、お互いの共通点が見えて、お互いのことを理解しやすくなっていくんです。
例えば、「それって『両利きの経営』で言うところの『知の探索』ですよね」とか、「(組織心理学者の理論である)センスメイキングが足りてないってことですから、うちの会社と一緒ですね」「うちの会社は『弱いつながりの強さ理論』が、ないんですよね」とか、違う業界の人たちでも同じ言葉で語り合えて、非常に議論が盛り上がる。ある日、僕が遅刻したら、参加者が『先生、もういいです。勝手にやっていますから』と、僕抜きで議論が盛り上がっている。みんな夢中になっていて、グループディスカッションに僕が入ろうとしようものなら、「先生はもういいから」って(笑)。
──教祖がないがしろですね。
入山:それが宗教なんです。みんなが同じことを同じ方向に向き、熱をもって同じことを信じて語る状態が宗教です。一方、布教活動には(キリストの使徒の)ペテロとパウロが必要です。そしたらキーパーソンが現れて、彼が「宗教法人のように広めましょう」と言って、オンラインで全国の商工会議所で始めたのです。商工会議所って全国に繋がっているので広まりやすい。最初にやったのが松山商工会議所。松山にもキーパーソンがいて、松山でイベントが開催されて、まさに聖地巡礼のように全国から集まり、議論のあとは道後温泉に入るという催しになりました。
──コミュニティ運営の理想形です。