心の拠り所という見方をすると、「推し活」も似たようなことです。
一般社団法人・世界標準の経営理論実践研究会で、僕が教祖と言いましたが、僕への属人性は高くない。世界の経営学者たちの経営理論が「教え」なんです。そうすると、教祖はいいタイミングで死んだ方が教えは広まりやすくなります。すでに使徒がいて、聖書があるから、教祖がいない方が解釈の余地が生まれます。生きていると、教祖の言葉が絶対になる。でも、死んでいたら、解釈に幅がでる。
──いい企業と宗教の類似点として、『宗教を学べば経営がわかる』のキーワードの一つに「センスメイキング(腹落ち)」が挙げられています。確かに、組織とは誰もが自然と納得して行動をともにする、人間の行動メカニズムによるものです。
入山:究極のセンスメイキングって、昔の不良少年たちです。「隣町の学校に殴り込みに行くぞ!」と言ったら、そこに理屈や生産性などなく、リーダーが言うと、「よし、いくぞ」とみんな腕まくりして殴り込みにいく。これは極端な例ですが、理想的な組織とは、「同じ理念を信じている人たちが集まり、ともに行動する」組織です。企業も同様です。先行きが不透明な時代にあって、宗教のように、企業は経営者と従業員がともに信じるべき目的が必要なのです。
例えば、ユーグレナの出雲充社長にも言ったのですが、ユーグレナはもう典型的な宗教だと思うのです。出雲さんというカリスマがいて、出雲さんを応援したい人たちが集まっている。ミドリムシのユーグレナが目指す世界観に共鳴した人たちです。
センスメイキング理論は、目先の正確性ではなく、20年後、いや100年後の遠い未来に向かって「私たちの会社はこういう未来をつくりたい」という腹落ちを醸成して行動していくことです。世界で成功している企業も、センスメイキングを重視しています。ユニリーバ、ネスレ、デュポンなど。また、革新を起こす起業家も腹落ちさせる達人です。セールスフォースのマーク・ベニオフ、テスラのイーロン・マスク、ニデックの永守重信さんもそうでしょう。