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2024.10.24 11:00

「新・いい会社」ランキング マルチステークホルダーと未来を切り開く20社

2024年10月24日発売の「Forbes JAPAN」12月号では、「新・いい会社100」特集と題して、全上場企業対象、独自調査・分析で作成した、「ステークホルダー資本主義ランキング」「自然資本ランキング」「脱炭素経営ランキング」「サプライチェーンランキング」「リスキリングランキング」などを紹介している。それぞれのランキング上位企業、計8社のCEOインタビューや早稲田大学商学部教授のスズキトモ氏、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏らのインタビューコラム等も掲載している。

企業が持続的な成長を遂げるには、株主偏重主義から脱却しマルチステークホルダーと未来を切り開くことが不可欠だ。東証プライム市場上場企業のデータを収集・解析し、Forbes JAPANが独自に算出した「ステークホルダー資本主義ランキング」を発表!


「あなたが考える『いい会社』とは」──。本特集で取材をした経営者たちに共通で問いかけた質問である。業種を問わず、トップの答えはほぼ一致していた。それは「ビジネスを通じて人と社会に貢献できる会社」である。

シェアホルダー(株主)資本主義から脱却し、従業員や地域、取引先、消費者など、さまざまなステークホルダーのウェルビーイングと自社の事業を紐付けながら、ともに持続的な成長を目指す。社会全体の利益を重視する「ステークホルダー資本主義」の意識の高まりを感じる。

今回、Forbes JAPANはサステナブル ・ラボの協力の下、「自然資本」「従業員」「株主」「サプライヤー・地域」「顧客・消費者」の5つの観点からなるステークホルダー資本主義ランキングを実施した。東証プライム市場の1644社(2024年7月末時点)を対象に、主に23年度の開示データを用いてランキングを算出した。

業種ごとに相対評価し算出した各指標のスコア(偏差値)に対してESGに詳しいサステナブル・ラボのアナリストがテーマ別に重み付けし、さらに業種別に設定されたマテリアリティ(重要課題)にのっとって重み付けを実施。各テーマのスコアを基に総合スコアを出した。ここでは、ステークホルダー資本主義ランキングで上位20位内に入った企業を紹介する。

ランキング算出方法

東証プライム市場の1644社が対象。主に2023年度の開示データを基にサステナブル・ラボが解析。「従業員」には「従業員満足度」「男性育休取得状況」など計8指標、「株主」には「取締役会におけるスキル保有状況」「配当性向」など計8指標、「サプライヤー・地域」には「サプライチェーン外部評価」「法人税/売上高」など計10指標、「顧客・消費者」には「製品の安全性と品質」「マーケットシェア」など計7指標、「自然資本」には「売上高あたりのGHG排出量」「SBTi脱炭素目標の開示」など計15指標を用いた。業種ごとの相対評価で指標スコアを算出し、業種のマテリアリティを基に重み付けして最終スコアを算出。なお、小数点第3位以下の数値が大きい企業を上位とした。

1|信越化学工業

総合スコア:80.79 自然資本:82.38 従業員:82.40 
株主:84.37 サプライヤー・地域:74.30 顧客・消費者:80.49

塩化ビニル樹脂、半導体シリコンウエハで世界首位の大手化学メーカー。2023年5月に、50年までに温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2)を実質ゼロとするカーボンニュートラル達成に向けた計画を発表。24年3月期の連結決算売上高は2兆4149億円(前年比14.0%減)。営業利益は7010億円(同29.8%減)、純利益は5201億円(同26.6%減)。

評価ポイント|2023年度の年間配当金は前年度と同額の1株当たり100円、配当性向は38.5%。1000億円相当の自己株式の取得など株主配当性向が良好。中長期的に40%の配当性向を目指す。半導体露光材料事業の拡大に向けて新たな工場の建設を決めるなど持続的成長に向けた設備投資も実施。近年は生産性の向上と省エネの両立を追求し、同社の温室効果ガス排出量の生産量原単位は過去 30 年間で半減(1990年比)。

2|小松製作所

総合スコア:79.82 自然資本:85.43 従業員:72.06 
株主:85.29 サプライヤー・地域:78.69 顧客・消費者:77.65

1921年創立の建設機械国内大手。収益向上とESGの課題解決の好循環を通じて持続的な成長を目指すサステナビリティ経営に、トップ自らコミットメントしている。2024年3月期の連結決算売上高は3兆8651億円(前年比9.1%増)。営業利益は6071億円(同23.7%増)、純利益は3934億円(同20.5%増)。

評価ポイント|CSR調達スタッフ育成のための教育を実施し、サプライチェーンマネジメント体制を構築。ROE(自己資本利益率)10%以上を経営目標に掲げ、2023年度から資産効率性向上に向けたグループ各社管理指標にフリー・キャッシュ・フローを導入。安定した販売量を見込むことで高利益率の部品・サービスの売上構成比を高め、需要変動に左右されない事業構造を構築している点などが高評価につながった。

3|アドバンテスト

総合スコア:79.67 自然資本:84.31 従業員:75.68 
株主:86.37 サプライヤー・地域:78.51 顧客・消費者:73.45

半導体検査装置大手。「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニー」を目指す。半導体を試験するためのSoCテスタやメモリテスタなど幅広い製品を扱う。2024年3月期の連結決算売上高は4865億円(前年比13.2%減)。営業利益は816億円(同51.3%減)、純利益は622億円(同52.2%減)。

評価ポイント|半導体の製造工程の最終段階で、意図している性能がきちんと出るかどうかをテストする「半導体テスタ」の市場シェアは、2017年の36%から23年には58%に増加した。顧客基盤と製品ポートフォリオの幅広さなどに競合優位性がある。成長事業への投資を優先し、研究開発費は前中期経営計画の1.2倍を投下予定。ROIC(投下資本利益率)を活用した資本効率と稼ぐ力の向上に取り組んでいる。

4|ヤマハ

総合スコア:78.65 自然資本:79.89 従業員:93.29 
株主:47.81 サプライヤー・地域:75.39 顧客・消費者:96.88

全世界で楽器を販売する楽器メーカー大手。電子楽器領域でも事業を拡大。2024年3月期の連結決算売上高は4628億円(前年比2.5%増)。営業利益は289億円(同37.6%減)、純利益は296億円(同22.4%減)。

評価ポイント|顧客の声を社内イントラで共有し商品企画や開発に活用するほか、顧客ロイヤルティを測るアンケートをグローバル規模で実施。23年だけで約2万4000件の回答があり、必要に応じて改善につなげるなど顧客満足度向上への取り組みが高評価。

5|横河電機

総合スコア:77.72 自然資本:87.08 従業員:82.19 
株主:77.73 サプライヤー・地域:70.56 顧客・消費者:71.05

工業計器国内首位。プラント向けの制御システムに強み。2024年3月期の連結決算売上高は5401億円(前年比18.3%増)。営業利益は788億円(同77.4%増)、純利益は616億円(同58.5%増)。

評価ポイント|2021年4月に内部昇格の女性執行役員が2人誕生。リスキリングの環境が充実しており、従業員のラーニング目標と実績を公表するほか、さまざまな分野の専門知識や技術を学べる企業内大学を設置するなど、企業文化から成長の風土を醸成している。
次ページ > 続いて6位〜10位の発表

編集=瀬戸久美子 解析・評価=サステナブル・ラボ イラストレーション=アンドレア・マンザッティ

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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