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2024.10.21 14:15

旅館DXの旗手、元湯陣屋4代目女将が「週休3日」でV字回復できた理由

神奈川県秦野市の鶴巻温泉にある旅館「元湯陣屋」。囲碁や将棋のタイトル戦にも使われる有名老舗旅館だ。しかし、4代目の宮﨑知子・代表取締役女将が夫の実家である陣屋を事業承継したとき、負債総額は10億円にも上っていた。そこで、宮﨑社長が最初に雇ったのはエンジニア。アナログだった業務管理を、自社で開発したIT管理システムで改革し、数年で経営を再建した。どのように業界の革命児となったのか聞いた。

聞き手は、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授だ。

事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」から紹介しよう。(転載元の記事はこちら




旅館の跡取りと結婚、負債額は知らなかった

──元湯陣屋との関わりを教えてください。

2000年に大学を卒業後、メーカー系のリース会社で7年間勤め、寿退社しました。相手は、学生時代から付き合っていた同級生(夫・富夫氏)で、陣屋の跡取りだったのです。

結婚する時は、旅館は大変なので幕を引こうかなという話も出ており、継がせるつもりはないと聞いていました。

──負債額10億円という話はご存じでしたか?

大変そうだな、とは聞いていましたが、そこまでとは思っていなかったです。把握していませんでした。

──多額の負債を抱えた旅館を、なぜ継ぐことになったのでしょうか?

出産後、穏やかにすごし始めたところ、義父のガンが発覚し余命宣告を受けました。義父を見送った後、義母が体を壊しました。この頃、リーマンショックが起こり、資金ショートまであと何カ月というような窮状に陥りました。

「さあ、じゃあどうしよう」と夫と話をしたんです。当時夫はホンダに勤めていましたが、「僕がいなくても1000人いるからなんとかなるでしょう。でも、陣屋は僕しかいないのでしょうがないよね」と。それで、私も事業を継ぐことを決め、2009年に女将になりました。

20室にパート100人「多すぎるでしょ」​​


──富夫さんが陣屋の社長に、知子さんは女将という形で、夫婦での事業承継となりましたが、実際に旅館を承継して何が課題だったのでしょう。

まず、人が多いところです。社員が20名に対し、パートさんが100名以上いました。客室も当時20室でしたので、人数が多すぎる。しかも1人が単一の仕事しかしない、自分の仕事しかやらない、連携できないという課題がありました。

また、敷地面積が広いので、誰がどこで何をしているのか管理監督がすごく難しい。仕組みの中に落とし込むっていうことが必要だと感じました。

最初に雇ったのがエンジニアだった理由

余剰人員と、アナログな業務管理の仕組みの改革に着手した宮﨑氏は、独自にクラウド型旅館ホテル管理システム「陣屋コネクト」を開発します。そして、経営をわずか数年で再建し、利益率を大幅に改善しました。

陣屋コネクトの特徴は、予約の受付から顧客情報、料理の内容に至るまで様々なサービスを一元管理できることです。宿泊客の到着は全スタッフが共有し、情報はタブレット端末やインカムの音声を通じてリアルタイムで伝えられます。スタッフの勤怠管理や日常的な報告、在庫管理、さらには経営分析まで可能なシステムでした。
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