ビジネス

2015.08.06

企業価値は300億円 健康飲料「Hint Water」を育てた主婦

創業者のカーラ・ゴールディン氏。健康志向とドリンクそのものの満足感に応えた「Hint Water」を生み出した。<br />(Courtesy of drinkhint.com)



4人の子を持つ専業主婦のカーラ・ゴールディンは2004年にダイエットを決意。家族にも糖分過多なドリンクを飲ませないようにした。冷蔵庫からは炭酸飲料を追放し、その代わりにピッチャーにザクロの種とラズベリーやライム、そしてブルーベリーを放り込み、オリジナルのフレイバーウォーターを作った。

このドリンクは友人らにも大好評で、ゴールディンはそれをボトルに詰めて売ることにした。11年後、彼女は資本金2,000万ドル(約24億8,000万円)、従業員36名を抱えるHint Water社の経営者となり、今年度の売上高は5,000万ドル(約62億円)を超える見込みだ。

カロリーゼロのHintはアメリカとカナダの2万店舗で販売されており、Fidelityや Google、Facebookといった企業のオフィスでも売られている。開業1年になるオンラインショップも既に売上の15%を占めるまでに急成長し、今やHint Water社の企業価値は2億5,000万ドル(約310億円)とも言われている。現在48歳のゴールディンに、これまでの道のりについて聞いた。


――ビジネスを始めた当初、会社経営についてはご存知でしたか。

2001年にAOLを退職するまで、私はECビジネスの運営に携わっていたので、バックエンドの運営体制の重要性は理解していました。AOLではバイスプレジデントも務めましたが、自分で一から何かをやってみたくなったんです。大企業に立ち向かうことはとてつもなく面白い。人々の健康を促進し業界に一撃を与える実験をやりたくなったんです。


――ボトル飲料のビジネスを開始するにあたって関連知識はあったのでしょうか。

最初はボトル業者についてのリサーチを始めました。専門用語ではボトル業者はco-packerと呼ばれるのですが、彼らにコンタクトを取って会いに行きました。訪問先では毎回のように「Kraft や Cokeにお勤めでしたか?」と聞かれて私は「いいえ、AOLだったんです」と答えていました。どの企業も親切にいろんなことを教えてくれました。


――最初はどのようにフレーバーを作りましたか。

妊娠中に料理の本を見ていて、自宅のキッチンでフレーバーを作ってみました。作り方は完全に独学で学びました。飲料業界にはフレーバーの製造を請け負う企業もありますが、我々は外注に頼ることはなく独自の製造法を貫いています。


――創業当時にはコカ・コーラの方にアドバイスを求め、Sweetie(かわいこちゃん)と呼ばれたそうですね。どんなお気持ちでしたか。

AOLの友人がコカ・コーラに人脈があり紹介してくれました。当時はもしも、買収の話があれば売ってしまおうとも思っていました。私には幼い子どもが4人もいて、元々テック業界に居た私はドリンクのビジネスのことはよく分からない。商売を軌道にのせるための資金も無くて悩んでいました。彼にアドバイスを求めたところ「アメリカ人はみんな甘いものが好きなんだよ」という反応でした。世間がHint Waterの意義を全く理解していないことに気づいたのがその時でした。誰も健康的なドリンクを作らないのなら、私がやるしかないと思ったのです。


――当時、従業員はいましたか。

1年目は私と夫だけで、私たちのグランドチェロキーにHintを載せて配達していました。まずは5万ドル(約620万円)の自己資金で始めて、その後の6カ月で20万~30万ドル(約2,480万~3,720万円)のお金を集めました。現在の資本金は約2,000万ドルですが、出資者の中にはグーグルの最初の従業員のひとりであるOmid Kordestani氏やWordPressの創業者のMatt Mullenweg氏などが居ます。


――現在の企業規模はどのくらいですか。

売上は約5,000万ドル(約62億円)以上で、飲料業界で算出される企業価値はその5倍から10倍になります。利益率は製品にもよりますが、小売店で販売される金額の50%から80%になります。


――ボトル飲料は環境に悪影響を与える。80%のプラスチック製ボトルはリサイクルされず、埋め立て処理されているというデータもありますが。

98%のボトルがサンフランシスコやニューヨークではリサイクルされているというデータもあります。全ての問題を一度に片付けてしまうことは出来ません。大事なのはボトルではなくその中に何が入っているかなのです。

文=スーザン・アダムス(Forbes)/ 編集=上田裕資

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