2. 昔からの言い伝え
「食べ物が悪夢を引き起こす」という考え方は、何百年も前から言い伝えられてきた。香辛料を使った料理や乳製品、あるいはピクルスなどは、以前から、夢に影響を与えると考えられている。たとえ科学的証拠が乏しい場合でも、こうした文化的な考えは今も消えていない。このような代々言い継がれてきた考えが、特定の食べ物を食べると悪夢を見るという思い込みをかたちづくってきたのかもしれない。子どものころから、「チーズや辛い食べ物を夜遅くに食べると悪い夢を見るよ」と親に言われてきた人は、奇妙な夢や不気味な夢を見たときに、食べ物のせいではないか、と考えるようになる可能性がある。
研究チームが示唆するように、一部の文化圏には、チーズを食べると悪夢を見るという考えが根付いている。この考えを不動のものにしたのが、1900年代初頭に米国の新聞に掲載された連載漫画『チーズトースト狂の夢(Dream of the Rarebit Fiend)』だ。
この漫画の英語タイトルにあるRarebit(レアビット)は、ウェールズ料理のチーズトースト(Welsh Rarebit)のことで、これを食べると悪夢を見るという言い伝えがあったことから、このタイトルがつけられたとされている。おかげで、スパイシーなチーズ料理を食べると奇妙な夢を見るという考えが定着した。
こうした言い伝えは、現代的な思考にも溶け込んで影響を与えている。例えば、「夕食にチーズを食べると悪夢を見る」と教え込まれてきた学生であれば、大事なテストの前日に悪い夢を見たのは、夕食にピザを食べたせいであり、テストへの不安が原因ではない、と考えるかもしれない。
というわけで、チーズがたっぷり載ったピザや、スパイシーな手羽先をたらふく食べた日の夜、嫌な夢で目が覚めたなら、その原因は想像力だけではなく、ほかにもいろいろあるのかもしれない。食べ物が夢に影響を与える可能性も確かにあるが、そのメカニズムについてはまだまだ議論の余地がありそうだ。
(forbes.com 原文)