ウクライナ軍の強力な部隊がクルスク州に電撃侵攻し、1000平方kmほどの地域を一気に制圧してから2カ月あまりたった現在、第155海軍歩兵旅団を含むロシア軍の旅団や連隊は反撃に出ており、ウクライナ側の突出部を少しずつ削り取っている。とりわけ西側の縁で顕著だ。
フィンランドのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)集団、ブラック・バード・グループ(Black Bird Group)のアナリストであるエミール・カステヘルミは「ロシア軍はゼリョーヌイ・シュリャフまで出てきていることが画像の撮影場所の特定からわかっていて、そこで8月に失っていた防御用構築物の一部を奪い返した可能性もある」と解説している。
さらに「状況を安定させるのは難しそうだ。ウクライナ側は9月初めにクルスク州で支配していた領域のおよそ3分の1を失った」とも書いている。
ゼリョーヌイ・シュリャフ周辺の土地は平坦で樹木もあまり生えていない。こうした地形は一般的には、塹壕に身を隠す防御側に有利だが、ウクライナ軍の侵攻隊はまさにこうした地形ゆえに十分な防御用構築物を準備するのが難しかった。
カステヘルミは「これくらいの広さのエリアでは、ロシア側はUAV(ドローン)で比較的監視しやすく、おそらく工兵機材を見つけしだい破壊することに優先的に取り組んでいるだろう」との見解も示している。
こうした事情から、ドローン操縦士たちを殺害された部隊を含め、突出部の西側周縁部に配置されているウクライナ軍部隊は、ロシア側のほうが火力をより集中させている正面から攻撃してくるロシア軍部隊に対して脆弱な状態にある。
第155海軍歩兵旅団は自軍側に有利な地形で戦い続ける限り、ウクライナ側の陣地をさらに蹂躙するかもしれない。だが、ウクライナ側はたとえ兵員数や火力で劣勢に立たされても、引き下がりそうにはない。第155海軍歩兵旅団が捕虜を残忍に扱うことが知れわたっている以上、同旅団に踏み込まれたどのウクライナ軍部隊も死ぬまで戦おうとする可能性が高い。
(forbes.com 原文)