北米

2024.10.16 17:15

日本企業は間違えるな! 米大統領選「もしトラ」「もしハリ」への食い込み方法

Photo by Spencer Platt/Getty Images

「トランプ型政権運営」の合意形成術とは

第一次トランプ政権には特徴があった。
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(1)まず、閣僚・側近ポジションへ対極な考えの要人を意図的に政治指名する。
(2)考え方が違う者をあえて揃えた政権なので、当然、喧々諤々の論争となる。
(3)論争をさせたうえでトランプ自らが判断(ディール)を下す。

手法は、第二次政権でも基本変わらないと見られている。この見立ては、実は第一次政権の人事を担ったトランプ政権移行チームの幹部から直接聞いたものである。

事実、スティーブン・ムニューシン財務長官の時もそうだが、敢えて重要な経済政策決定の際は対極の政策傾向にあるゲイリー・コーン国家経済会議議長などと論争させてきた。
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翻り、日鉄を巡っては、当時閣僚であったロバート・ライトハイザー元USTRが買収案に反対の中、ウィルバー・ロス元商務長官が賛成しているように、今もトランプ側近らの意見が全く合致していない。

J・D・ヴァンスの副大統領候補指名もこの「トランプ型コンセンサス(合意形成)」を覆すほどの影響力はない。

「引き続き、トランプは相反する考えの要人を別途採用する」と、2016年に続いて、今回も政権移行チーム入りしている幹部は言う。よって、結論から言えば、CFIUSが承認判断を下した場合(大統領が最終的に合意署名する必要がある)、その結果をもとに、日本製鉄の買収案が再度振出しから議論され、新政権が賛成に転じる可能性が出てくる。トランプ自身が最終的に介在できるのであれば交渉可能、従前の意見も変えることができるということになる。

トランプは「政権移行チーム」の共同会長を4名選出、長男・次男に加え保守政治政策団体America First Policy Institute(AFPI)のリンダ・マクマホン会長と、投資銀行キャンター・フィッツジェラルド社CEOのハワード・ルトニク。特に注目されるのがマクマホンである。早い頃よりトランプ支持を打ち出すAFPIの会長自身が政権移行チームの共同会長となったことにより、組織全体としても人事選定プロセスを後方支援することが想定される。

なお、「政権移行チーム」とは、日本や英国が言う「次の内閣」を担うシャドーキャビネットと同じ意味ではない。次の政権に入るべき閣僚候補リストをつくり大統領候補に提言する、いわば人事チームといった意味合いに近い。米国の政権交代とは、巨大な官僚機構を様々なレベルで指揮・統率するため、政権より直接政治指名された7,000人もの民間人が新たに政府の隅々へと送り込まれる。いわば、権力を総入れ替えする一大変革をもたらす。その人数を大統領一人ではさばけないため、自分が直接要請した中核メンバー約20人をまず選ぶと、やがて100人程度の人事チームとなり、両党にて選挙前に組成される。もちろん、政権移行チームの中には論功行賞で、自らが政権入りするケースもあるが、多くがそのまま人事業務を済ませるとチームは解散となる。

そして、政権移行チームのマクホマンと同じAFPIに所属し、トランプ候補の上級経済アドバイザーでもあるスティーヴン・ムーアは日鉄買収案を礼賛するレポートの作者である。

まだ未定ではあるも、ムーアや他の者たちが今後政権入りすることで日鉄買収案への推進派が加わることとなる。トランプに個人で直接物申して意見が聞き入られた事例はほとんどない。最近、日鉄がアドバイザーとして起用した元国務長官マイク・ポンペオでもそうだった。つまり、異なる意見をトランプの前で闘わせることに彼は意味を抱いているのだ。そのため、次期政府の人事権を握っている政権移行チームにこそ、買収推進派を戦略的に入れ込んでもらう必要がある。
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文=山崎ロイ

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