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2024.10.15 12:00

インドで最も裕福な女性の息子が描く「インド製EV」の未来

パース・ジンダル(写真左)とサッジャン・ジンダル(同右)Photo by Ashish Vaishnav/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

パース・ジンダル(写真左)とサッジャン・ジンダル(同右)Photo by Ashish Vaishnav/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

インドで最も裕福な女性であるサヴィトリ・ジンダルの息子のサッジャン・ジンダルは、ムンバイを拠点とする鉄鋼・エネルギー大手のJSWグループを率い、同社を電気自動車(EV)分野にも参入させている。

鉄鋼から電力までを手がける複合企業のO.P.ジンダル・グループの女性リーダー、サヴィトリ・ジンダルとその一族の保有資産は437億ドル(約6兆5000億円)とされている。JSWは、3月に中国の上海汽車(SAIC)からMGモーターインド法人(MGインド)の35%の株式を非公開の金額で取得し、新たな社名をJSW MGモーターにした。

サッジャンの息子でJSW MGモーターの取締役を務めるパース・ジンダルは、インド政府のEV推進策の追い風を受けて、EVの未来に強気の姿勢を見せている。「EVに関しては、既存の大手の自動車メーカーと新規参入者の差がほとんどなくなっている」と彼は述べている(JSW MGモーターの49%は、SAICが保有し、シンガポールの投資会社のエバーストーンキャピタルが8%、従業員が5%、MGの自動車販売代理店が3%を所有している)。

JSWグループは約18億ドル(約2670億円)をJSW MGモーターに投入し、年間の生産キャパシティを現在の10万台から2026年までに30万台、2030年までに100万台に拡大しようとしている。同社はグジャラート州に唯一の工場を持っているが、近隣にもう1つの工場を建設する計画を立てており、3~6カ月ごとに新モデルを発表する予定だ。さらに、コスト削減のためにJSWグループからの材料の調達を含め、より多くのインド製の部品を採用する方針だ。

インド政府は3月に、一部のEVの輸入関税を引き下げると発表した。企業が少なくとも5億ドルの投資と3年以内の工場建設を確約することが条件になる。パースは、「世界の自動車大手が自国に技術を持ち込むことを政府は推進すべきだ。それがエンジンからEVへの移行というインドの目標を達成する唯一の方法だ」と述べている。

インド自動車工業会(SIAM)によれば、今年の3月末までの1年間の国内の乗用車販売は前年同期比8%増の420万台に達したが、EVはその2%を占めるに過ぎない。2024年第1四半期のEV市場では、タタ・モーターズが67%のシェアを占めた一方で、ビリオネアのアナンド・マヒンドラのマヒンドラ&マヒンドラとJSW MGモーターがそれぞれ13%のシェアで2位と3位に位置していた。

JSW MGモーターはSUVと小型車、最近発表された中型クロスオーバーSUVの3つのEVモデルを提供している。パースは、2030年までにインドの乗用車の販売台数が67%増加して700万台に達すると予想しており、EVの販売台数が200万~250万台に急増すると見込んでいる。

「当社は、2030年までに年間60万台の車を販売し、そのうちの75%をEVにしたいと考えている」とパースは述べている。彼は、JSW MGモーターの売上高が2025年3月31日までの1年間で10%増加し、15億ドル(約2231億円)に達すると見込んでおり、さらに2030年までにその10倍の150億ドル(約2兆2000億円)になると予想している。

パースは、今後の3~5年以内にJSW MGモーターを上場させたいと述べている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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