コンサルティング企業のEYパルテノンは、インドの製薬業界の規模が2030年までに現在の2倍の1300億ドル(約19兆3710億円)に達し、2047年までに3倍以上の4500億ドル(約67兆2000億円)に達すると予測している。
ビリオネア兄弟のラメシュとラジーブ・ジュネジャが所有するマンカインド・ファーマは、7月にムンバイに拠点を置くバーラト・セーラムズ・アンド・ワクチンズを米国のアドベント・インターナショナルから、16億ドル(約2384億円)で買収する計画を発表した。
ムンバイの調査会社HSIEリサーチは、この買収がマンカインドを女性の健康や不妊治療における市場のリーダーに位置付けることになると述べている。また、この買収によりデリーを拠点とする同社の国際的なプレゼンスは、2024年3月期の20カ国以上から70カ国以上に拡大することになる。
マンカインドの2024年度の売上高は、12億ドル(約1788億円)に達していた。兄のラメシュと共に、30年以上をかけて同社をインド最大の製薬企業の一つに成長させた副会長のラジーブは、「この買収は当社の重要な節目になる」と述べている。
一方、ハイデラバードに拠点を置くドクター・レディーズ・ラボラトリーズも、グローバルの消費者向けヘルスケア事業を強化している。6月に同社は、英国を拠点とするヘルスケアグループ、ヘイリオンの一部であるNorthstar Switzerlandを6億5600万ドル(約977億円)で買収することに合意した。
この買収を通じてドクター・レディーズは、米国以外でのヘイリオンのニコチン置換療法事業や禁煙のためのガムやニコチンパッチを含む事業を取得し、欧州におけるプレゼンスを強化する。
同社の共同会長のサティッシュ・レディらは近年、ジェネリック薬や市販薬での成功を原動力として、健康とウェルネス分野で新たな成長を目指している。ドクター・レディーズの売上高は、2025年3月期に36億ドル(約5367億円)に達するとHSIEのアナリストは予測している。
異業種から製薬分野に進出
また、洗剤からセメントまでを手掛ける日用消費財企業のニルマも、ヘルスケア分野への進出を加速させている。同社は3月に心血管疾患や糖尿病などの慢性疾患に対する治療法を専門とするグレンマーク・ライフサイエンシズの株式の75%を、6億8000万ドル(約1013億円)で取得すると発表した。この取引は、ニルマがIV液や注射薬を含むヘルスケア関連の製品ポートフォリオを強化するために、点眼薬メーカーを買収したことに続くものとなる。一方、化学品メーカーのPIインダストリーズも本業の農薬事業を超えて製薬業界で多角化を進めている。同社のグループ企業のPIヘルスサイエンスは昨年、希少疾患の薬の開発を専門とするアラバマ州に本拠を置くTherachem Research Medilabを7500万ドル(約111億円)で買収した。また、イタリアのArchimicaをドイツのPlahoma Twelveから3800万ドル(約56億円)で買収した。
インドの製薬セクターは、今後の数年間で年率8%から10%の売上高成長が予測され、その一部は供給量の増加と新たなプロダクトによって後押しされるとHSIEリサーチのアナリストは述べている。「この分野をリードする企業は、M&Aや営業チームの拡大、新製品の発売などの戦略を通じて、インドの製薬市場全体を超えるスピードの成長を実現することが予想できる」と同社のアナリストは指摘した。
(forbes.com 原文)