イスラエルのネタニヤフ政権がガザやレバノンで紛争を継続できるよう、米国が数十億ドル相当の兵器を供給していることは広く知られているが、米国がレバノン軍にも相当な量の兵器と訓練を提供していると知ったら、米国民の多くは驚くかもしれない。イスラエルによる侵攻の主な標的はレバノン軍ではなくヒズボラだが、イスラエル国防軍(IDF)とレバノン政府軍が衝突する可能性は皆無ではない。
ジャーナリストのニック・タースは、ネットメディア「インターセプト」の記事で、「米国は2006年以来、レバノンに55億ドル(現在のレートで約8220億円)以上の対外援助を行なっており、そのなかには30億ドル(同約4480億円)の軍事援助も含まれる」と述べている。供給されたのは、「軽攻撃機、ヘリコプター、ミサイルのヘルファイアなどだ。さらに、装甲車と戦術車両130台も別途供給されている」
Project on Middle East Democracyの権利擁護ディレクター、セス・バインダーはタースに対して、米国の援助は、意図した効果をもたらしていないと語っている。「米国が援助しているにもかかわらず、レバノンは依然として驚くほど不安定だ。治安部隊は、ヒズボラの国内での活動や、地域的な活動に、いまだ対応できていない」
米国政府がレバノン軍に兵器を供給している理由は、完全には明らかになっていない。レバノンへの兵器販売に関して、米国防総省が米連邦議会に対して示した根拠は曖昧なもので、「戦略的パートナーの安全保障の改善を助けることで、米国の外交政策と国家安全保障が強化される」と説明している。
米国防総省はさらに、レバノンへの兵器販売は、「レバノンが現在そして将来の脅威に対処する能力を向上させる」と、同じくらい曖昧に述べている。レバノンは、その強化された能力を国土防衛と武器弾薬の補充に充てている。「脅威」については明示されていないが、レバノンにとって現在の脅威は、米国の同盟国であるイスラエルによって生じたものだ。ヒズボラや、イランのような敵とされる国から生じたものではない。
前述した通り、イスラエルによる侵攻の主な標的は、レバノン軍ではなくヒズボラだ。イスラエルがレバノンに侵攻してから、レバノン軍は南部から撤退し、北部に戦力を集中させている。レバノン軍は間違いなく、イスラエル国防軍との直接的な戦闘は避けたいと考えているだろうが、米シンクタンク戦略国際問題研究所のアナリストであるアラム・ネルグイジャンは、レバノン軍がイスラエル国防軍に対して防衛措置を講じる可能性を示唆している。
しかしほとんどの場合、レバノン軍は、隣国イスラエルによる自国への爆撃には、距離を置いているように見える──そして、イスラエルとヒズボラの戦いは、レバノン国民が犠牲を強いられる状況となっている。