湧き上がってきた感情は『ひとりじゃなかったんだ』
続いて行われたセレモニーでは、各受賞者がひと組ずつ登壇し、クリスタルトロフィーを手にスピーチを行った。AIエンジニアであり、SF作家と起業家の顔を持つ安野貴博は表彰を受け、「私はソフトウェアエンジニア、起業家、SF作家、そしてAIによる作品の製作などを行なってきた。すべてバラバラのように見えるかもしれませんが、私の中ではテクノロジーを使いながら未来を描くという、ひとつのことをやってきたつもり。奇しくも私の経歴ややってきたことはカルチャーと起業家の側面があり、この2つが融合したカルチャープレナーという言葉があり、賞を頂けることを嬉しく思っています。今後も技術と起業精神を生かしながら新しい挑戦を続けていきたい」と語った。
現在アメリカの約500の小売店で展開されている発酵調味料ブランド「Cabi」の共同創業者である野村美紀は、「私たちは日本生まれ日本育ちながら、アメリカに住む経験を持ち、日本の味のその後ろにある文化や人を受け止めながら、アメリカのライフスタイルとの架け橋となるという、ジャパニーズアメリカという文化を目指しています」とコメント。「まだ2年前に創業したばかりですが、その間にさまざまな方々に支えて頂き、多くの出会いがあってここに立てていると思っています」と周囲への感謝も口にした。
石川県能登町の「ふくべ鍛冶」4代目店主の干場健太朗は、「能登半島は元旦の大地震、そして9月の大豪雨で、輪島塗やそれを支える職人たちがボロボロになっています。しかし、危機だからこそ前を向いて、震災前に戻すだけではなく、それを超えていく。そして時代に合わせるだけでなく、時代を超えていく。そんな活動をして行きたいと思っています」と訴えた。
NEO阿波踊り集団「寶船」リーダーで、アプチーズ 代表取締役を務める米澤渉は「みなさんのスピーチを聞いていて、湧き上がってきた感情は『ひとりじゃなかったんだ』という感覚。文化に携わる方にはしがらみもたくさんあり、理解者は世界にひとりもいないと思うこともあったはず。それでも進んできて、こうして仲間が集ったことに感激しています。阿波踊りには、『同じ阿呆なら踊らにゃ損々』という言葉があり、これは踊りに限らず、勇気を出して恥をかく側に回るという言葉になります。京都で踊る阿呆の方々と集えて本当に幸せです」と明かした。
京都市特別賞は水玄京に
共催である京都市は30組の選出基準に加え、「地域の多様で創造的な人々やコミュニティと接続し、京都の文化をアップデートしている人たち」という観点から、京都市が求めるカルチャープレナー像を象徴するとして、水玄京の代表取締役社長である角居元成を「京都市特別賞」に選出。日本全国の伝統工芸品を集約したメディアコマースプラットフォームを運営する同社の角居は、「今、日本の伝統工芸産業は厳しい状況にあります。私たちのような事業者は自分たちの利益追及よりも大局観を持って未来を見据え、垣根を越えて一丸となって業界の先を照らしていけたらと考えています」と言及。「2年半ほど前に京都で会社を設立してから、京都の職人さんや京都市役所の方々にはお世話になっています。今後、会社がどれだけ大きくなろうと、京都から拠点を移すことは微塵も考えていませんので、お付き合い頂ければ幸いです」と京都への思いも明かした。