しかし、停留精巣、甲状腺ホルモンのかく乱、生殖機能障害、発育障害にも、BFRへの暴露(化学物質が身体の中に入ること)は関連していることが、これまでの疫学研究でわかっている。また、ラットを使った多数の研究では、各種のBFRがいかに神経系の発育や機能に影響を与え得るか、また、内分泌かく乱物質として作用し、生殖機能の発育と機能に影響を与えるようになり得るかが示されている。さらに、BFRへの暴露と、乳がんや内分泌がんの発症との関連性も、複数の研究によって発見されている。
私たちは、どのようにしてこのようなBFRに暴露するのだろうか。そう、例えば、BFRが含まれた黒いプラスチック製のスプーンをしゃぶったりすることで、口に直接触れて暴露する場合がある。また、米国環境保護庁は「手から口への動き」についても言及している。 さまざまな意味に解釈できる言葉だが、この場合はBFRが含まれたものに触った手で口に触れるということだ。
別の経路としては、BFRが含まれるプラスチック製の容器などから食品に溶け出し、それを食べるという状況も考えられる。特に脂肪分が多い食品では、BFRが食品内に留まる可能性が高くなる。しかし、家や職場で難燃剤が使われている品物に囲まれて生活していれば、BFRが体内に侵入する方法はいくらでも挙げられるだろう。
黒でなければ安全だろうと、オレンジ色のように他の色のプラスチック製品を購入しようとする前に、この研究は黒いプラスチック製品のみを調べたものであるということに留意するべきだ。他の色のプラスチック製品は調査していないため、黒以外のプラスチック製品にも同じくらいのBFRが含まれている可能性を排除できない。黒いプラスチック製品を避けるように最善を尽くすことはできるが、これほど蔓延しているとBFRを避けることは困難だ。
だからこそ、この研究著者の1人は、2024年11月に韓国の釜山で世界各国の政府が集まって交渉を行う国際プラスチック条約の会合に目を向けている。「バイデン政権は、最も有害なプラスチックや毒性のある添加剤の使用を、リサイクルプラスチックにおいても、禁止する条約を支持しなければなりません」と、Toxic-Free Futureの科学・政策担当マネージャーを務めるリューは声明で勧告している。「その解決策は明らかです。女性や子どもの健康は、化学産業の利益より優先されなければなりません」。条約交渉の結果が有害になるか無害になるか、時間が経てばわかるだろう。
(forbes.com 原文)