その陰謀論のひとつは、この嵐による最も大きな打撃を受けた地域が、共和党の支持者が多いエリアに偏っており、民主党支持者が多い地域を避けて通ったという見方に基づいている。
しかし、最も広く繰り返し主張されている陰謀論のひとつは、このハリケーンが、国防総省(ペンタゴン)がリチウムなどの鉱物の大規模な埋蔵地にアクセスできるようにするために、人為的に作られたという説だ。
「ノースカロライナ州のこの地域に関する興味深い事実があります。この州は、米国最大のリチウム鉱床の上に位置しているのです」と、オルタナ右翼のパーソナリティのスティーブ・ピーターズは、保守派に人気の動画サイトRumble(ランブル)に投稿したビデオの中で語っている。
彼は、米国政府と中央銀行による「犯罪シンジケート」が、リチウム鉱床から巨額の富を稼ぎ出すために、ハリケーンを用いたと主張している。ハリケーンは、そこに暮らす人々を追い出して、気候変動を悪者にするための、最良の手段だとピーターズは述べている。
この技術がどのように実行されているかについては、さまざまな説があるが、ハリケーンの進路が、地上に設置された高周波送信機によって操作されたというのが一つの説だ。「大気圏への高周波送信は、特に空気中に導電性ナノ粒子が含まれる場合に、気団に反発を引き起こす効果がある」と、専門家を自称する人物はYouTubeで述べている。
また、より広く知られている陰謀論としては、アラスカ大学フェアバンクス校が実施している電離層観測プログラムのHAARPの関与を主張するものがある。このプログラムは、180本の高周波アンテナを用いて嵐や熱波などの自然災害を引き起こしているとの説が、以前から流布されてきた。
「New World Order(新世界秩序)のジオテロリストたちは、HAARPを用いてハリケーンの形成やその進路を操作した」と、あるサイトは主張している。
しかし、HAARPによると、このプログラムが送信する電波は、地球の気象を左右する2つの層である対流圏と成層圏のいずれにも吸収されないという。「相互作用を持たないため、天候をコントロールすることは不可能だ」とHAARPは述べている。
今回のハリケーン絡みの陰謀論としては、これらのほかに、「ケムトレイル」と呼ばれる特殊な飛行機雲が利用されたと主張するものや、フロリダ州立大学のMagLab(マグラボ)研究所が持つ世界で最も強力な磁石が使用されたというものなどが挙げられる。
しかし、これらの陰謀論がいずれも科学的根拠に基づかない、荒唐無稽なものであることは明らかである。地球平面説を唱えるフラットアーサーと呼ばれる人たちだけは沈黙を守っているようだ。少なくとも今のところは。
(forbes.com 原文)