移民問題が再び注目を集めている(注目を集めない時期などあっただろうか?)が、話題になっているのは単にその数だけではない。欧米では、合法的な移民か不法移民かにかかわらず、大量に押し寄せる移民に対する懸念が政治的にも経済的にも大きな話題となっている。
米国に入国する移民の数はこの1年間で大幅に減少したものの、根本的な課題は解消されていない。米移民問題研究センターの推計によれば、同国に滞在する不法移民の数は約1400万人に上り、わずか数年前と比較しても大幅に増加している。米国では、外国出身の住民が全人口に占める割合が14%を超え、イタリアやポーランドなどからの移民の波が押し寄せた1900年代初頭以来の高水準となっている。
家賃が高騰する米国の都市
今日、移民は米国の納税者にも投資家にも直接影響を与える形で財政を圧迫している。全米で起きていることの縮図として、オハイオ州スプリングフィールドの事例を見てみよう。人口5万8000人のスプリングフィールドは最近、カリブ海の国ハイチからの難民を大量に受け入れたことで、家賃や物価の高騰を招いている。米不動産情報サイトのジローによると、スプリングフィールドの賃貸価格の中央値は、わずか1年で43%も跳ね上がった。物価上昇が波及する中、地元の人々はガソリンスタンドや食料品店でも懐具合の寂しさを感じている。上昇しているのは物価だけではない。流入する移民に対応するため、通訳や職員の増員が求められているほか、医療機関も逼迫(ひっぱく)している。オハイオ州のマイク・デワイン知事は先月、スプリングフィールドへの250万ドル(約3億7000万円)の支援を表明したが、地元納税者に負担がかかっていることは否定できない。