パランティアの株は、9月6日に米国を代表する株価指数であるS&P500の構成銘柄に採用された。カープは、その直後に公開した同社のYouTube公式チャンネルで次のように語った。
「人々は、私たちの会社がどうやって変貌を遂げたのかを完全に理解していない。まるでフランケンシュタインのような奇妙なリーダーに率いられた集団だと思われていたこの会社が、どのようにしてS&P500に採用されるほどの利益を上げる会社になったのかを」と、57歳のカープは森の中のジョギングの途中で撮影したビデオで語った。「私たちは自分のやり方でそれを成し遂げた。反乱者たちが勝ったのだ」と彼は続けた。
企業がデータを収集、管理、分析するためのソフトウェアを提供するパランティアは、創業当初は米中央情報局(CIA)のような秘密主義の政府機関を顧客にしていたが、今ではさまざまな分野の企業顧客を抱えている。同社の2024年6月までの1年間の収益は前年から20%以上も上昇して25億ドル(約3720億円)に達し、初の黒字化を達成した。この記録的な躍進は9月のS&P500への採用につながった。
同社の成長の一因は、そのソフトウェアが人工知能(AI)ブームの波に乗ったことにある。「パランティアは、過去20年間にわたりAI関連の優れた技術を構築しており、特に政府のような大規模で複雑な組織との取り組みで成功した」と、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチでアナリストを務めるマリアナ・ペレス・モラは述べている。
パランティアの株価が過去1年間で約140%上昇したことを受けて、カープは今年初めてフォーブス400に名を連ねることとなった。フォーブスは、9月1日時点のカープの保有資産を36億ドル(約5350億円)と試算している。
哲学者から起業家に転身したカープは、フォーブスに宛てたメールで、パランティアにはまだ成長の余地が十分にあると語った。「私たちは今、世界の無秩序が増大する状況に直面している。無秩序な世界と戦うために設立されたこの会社は今、勢いに乗っているが、まだ始まったばかりだ」と彼は書いていた。
哲学者から起業家への転身
ニューヨークで生まれ、フィラデルフィア郊外で小児科医の父と芸術家の母のもとで育ったカープは、枠にはまらない存在であることを誇りにしてきた。「私はユダヤ人で、人種的に曖昧なディスレクシア(失読症)だ。だから、何だって言えるんだ」と、彼は8月のニューヨーク・タイムズ紙によるインタビューで述べていた。リベラル・アーツ・カレッジの名門、ハバフォード大学で学士号を取得したカープは、スタンフォード大学で法学を学び、ナチスによるユダヤ人迫害の問題に取り組むためにドイツに渡り、ゲーテ大学フランクフルトで新古典派社会理論の博士号を取得した。テクノロジーのバックグラウンドを持たない彼は、スタンフォード大学で出会ったピーター・ティールらとともに2003年にパランティアを共同創業した。同社には、西洋の価値観とアメリカの防衛力を支援するという明確なミッションがあり、カープはそれについて積極的に語っている。「私たちは、米国とその同盟国をサポートしており、ビジネスと戦場の両方におけるパートナーの成功を唯一の目標としている」と彼は、フォーブスに宛てたメールで述べていた。