バイオ

2024.10.08 16:45

「培養肉」普及の課題となる生産効率を上げる鍵

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環境負荷の高い畜肉生産の代替として期待される培養肉だが、生産性が低く高コストとなり、なかなか普及が進まない。だが、早稲田大学、東京女子医科大学、神戸大学による共同研究チームは、光合成微生物を使った画期的な培養方法を開発した。培養肉の成長ばかりでなく、持続可能性も高めるというものだ。

培養肉の課題のひとつに、筋肉細胞を培養する際に排出される老廃物、乳酸とアンモニアの存在だ。筋肉細胞が増殖するごとにこれらの老廃物が増え、それが培養液中に増える細胞の成長が妨げてしまう。

研究チームは、先行研究において、これらの物質を細胞増殖の栄養源となるピルビン酸とアミノ酸に変換する光合成微生物シアノバクテリアを開発していたが、それが本当に細胞培養に効果があるのかを確かめるため、今回、動物細胞とシアノバクテリアの共培養の実験を実施した。

実験では、シアノバクリアと、成長因子を分泌するラットの肝臓細胞を共培養した。培養条件を最適化すると、シアノバクテリアは乳酸を3割以上、アンモニアを9割以上減少させることがわかった。また、シアノバクテリアは細胞の増殖で消費される以上のピルビン酸とアミノ酸を生成するため、培養後に残る培養上清液中にも多くの栄養源が残ることも判明した。この上清液を使えば、動物血清を使わなくても骨格筋芽細胞の増殖率は、ラット肝臓細胞だけによる上清液の3倍以上にものぼった。

つまり、老廃物を栄養源に変えるという好循環で培養液の使用量を減らすことができ、コストの低減が期待される。また、動物血清も使わないため倫理的な心配も少ない培養肉の生産に道が拓けることになる。

今回の実験は平面培養だったので、今後は大量生産に向けて三次元培養システムへのスケールアップと最適な培養条件の探索が必要になる。この細胞培養システムは、培養肉だけでなく、バイオ医薬品の生産や再生医療などにも適用可能な汎用性があるとのことだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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