ウクライナ軍がロシア軍のネーボ-Mを狙ったのは少なくとも4回目だ。2023年の5月と6月、8月にもネーボ-Mを攻撃し、損傷させるか撃破した可能性があるものの、確かな証拠には乏しい。オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)サイト「オリックス(Oryx)」は3日より前の時点で、ネーボシリーズのレーダー1基の撃破、2基の損傷を視覚的に確認している。
ウクライナ軍参謀本部の発表によると、ロシア軍が運用するネーボ-Mは今回攻撃されたものを含めて10基しか残っていなかったという。ウクライナ軍はロシアが全面戦争を始めてから2年7カ月あまりの間に、ロシア軍のネーボ-Mの3分の1程度を攻撃してきたのかもしれない。
1基1億ドル(約150億円)超とされるネーボ-Mはロシア軍にとって貴重な装備だ。ロシア軍はほかのレーダーでカバーできていない範囲を埋め、防空部隊によるウクライナ軍のミサイルの探知を支援するために、ネーボ-Mをウクライナの南部や東部で移動させている。ウクライナ軍参謀本部は、ネーボ-Mの撃破はロシア軍による航空機や巡航ミサイルなどの空力目標や、弾道ミサイルなどの弾道目標の「探知・追跡・迎撃能力を大幅に低下させる」と説明している。
とりわけ、ウクライナ側はネーボ-Mを破壊することで、空中発射型の巡航ミサイルである英国製ストームシャドーやフランス製SCALP-EGが飛んでいける経路を確保できる。これらのミサイルは、搭載できるように改修したウクライナ空軍のSu-24戦闘爆撃機から発射される。
重量1300kgのストームシャドーとSCALP-EGは、防護された目標を精密攻撃するのに有効な兵器だ。最も有名なのは、2023年9月、ロシア占領下のクリミアでストームシャドーがロシア海軍の潜水艦ロストフ・ナ・ドヌーを食い破り、内側から破壊したことかもしれない。ロストフ・ナ・ドヌーはその後修復されたものの、今年8月、再びストームシャドー/SCALP-EGとみられるミサイルで攻撃され、沈没したと報告されている。