サイエンス

2024.10.06 13:00

洞窟で発見された謎の種子が発芽して木に成長 聖書記載の「秘薬」採れる絶滅種か

「シェバ」と同じカンラン科コンミフォラ属の木、ミルラノキ(モツヤクジュ)。(Shutterstock.com)

ところがシェバの場合、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定したところ葉、樹皮、樹脂から芳香性成分はほとんど検出されなかった。このことから、シェバはコンミフォラ属の、治癒効果のある樹脂抽出物を算出する絶滅種だと推測された。実際、シェバの樹皮に傷をつけると、透明なオレオレジンが少量分泌される。オレオレジンは炎症を抑えるのに用いられてきたものだ。

研究チームはさらに、シェバからスクアレンの一種である油成分も検出している。スクアレンも抗酸化作用があり、皮膚の保湿や保護のため塗布されていた可能性がある。

種子が見つかった場所が洞窟内だったことから、この地域に住んでいた人たちがこの木を植えていた可能性が高く、彼らはその薬効も知っていたと考えられる。

そのため研究チームは、この木から採れる樹脂について、聖書に何度か登場する薬効のある神秘的な物質のツォリなのではないかとの説を提起している。ツォリは古代世界で珍重され、ローマ帝国各地に輸出されていた。これまでの研究によると、ツォリは治癒のほか、香料やお香、防腐剤、さらには解毒剤としても使われていたらしい。

現時点ではシェバがどの種に属するのかまではわかっていない。この木は花を咲かせておらず、科学者による種レベルの解析に必要な繁殖物質がつくられていないからだ。そもそもシェバが開花するのかどうかも不明だという。

それでも研究チームは、シェバは、かつてレバント各地に広く分布し、9世紀までに絶滅したとみられる樹木の系統だと結論づけている。そこからは当然、この樹木はなぜ絶滅したのかという重要な問いに導かれる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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