昨年11月、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは、長年住み慣れたワシントン州を離れ、フロリダ州に移住すると発表した。彼はその後、マイアミの富裕層が住むエリアの3つの豪邸を2億3400万ドル(約340億円)で購入している。
ベゾスはその後、今年の2月から7月にかけて80億ドル以上のアマゾン株を売却した。ワシントン州では「株式や債券の売却で得た年間25万ドル以上のキャピタルゲインに対し7%の税金を課す」という税法が2022年に施行されたが、フロリダ州にはそのような税が存在しない。
フォーブスは、今年のフォーブス400に入ったテック系ビリオネアの中で、会社内のポジションや大規模な持ち分のために、株の取引の開示を義務づけられている24人の株の取引動向を追跡した(税金の支払いのための売却や、慈善団体を通じた売却は除外)。その結果、彼らは今年の年初から9月1日までの間に総額150億ドルの株式を売却しており、17人が1億ドル以上の株を売却したことが判明した。
ベゾスを筆頭とするこれらのビリオネアたちは、市場の動向を見据えて株を売却している。彼らは、2021年の株価の上昇の際には、売却を一時中断し、2022年のテック市場の暴落時にも売却を控えていた。そして、2023年の大幅なリバウンドで利益を得たうえで、今年に入りその一部を現金化している。
「キャピタルゲイン税」の上昇への懸念
超富裕層の節税に詳しい法律事務所ウィザーズの弁護士のエドワード・レンによると、ビリオネアたちは、今後の数年でキャピタルゲイン税の上昇に対する懸念から、2年前と比べて株を売却する傾向が強くなっているという。例えば、今年のフォーブス400で12位のマイケル・デルは、昨年11月にブロードコムがデル・テクノロジーズのスピンオフであるVMwareを買収したことで、現金と株式で330億ドル以上を入手した。彼は、さらに現金が必要だったようで、それ以降に20億ドル以上のデルの株式を売却した(デルの広報担当者は、売却の理由についての説明を拒否したが、その一部は今年彼が自身の慈善団体に拠出した40億ドル以上の一部である可能性が高い)。
メタのCEOのマーク・ザッカーバーグとエヌビディアのCEOのジェンスン・フアンも、それぞれ9億4000万ドルと5億9000万ドルの株式を売却した。また、オラクルの共同創業者のラリー・エリソンも、主に行使期限が迫っていたオプションを行使した結果、2億3000万ドルの株式を売却した。もちろん、これらの3人はすべて、運営する企業の株価の上昇により、持ち株を売却してもなお、昨年よりもさらに資産を増加させていた。