9月27日の時点で、世界の石油価格の指標銘柄であるブレント原油は、年初来で約7%下落となり、1バレル70ドルという底値をわずかに超えている。26日から27日にかけて、11月のブレント原油(先行契約)は2.53%下落し、前日よりも1.86ドル安い71.60ドルとなった。
また、米国の指標銘柄であるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は3%下落し、前日よりも2.02ドル安い67.67ドルとなった。WTIも、年初来で約5%下落している。
直近の下落の引き金となったのは、『フィナンシャル・タイムズ』の報道だ。つまり、サウジアラビアが、同国の非公式の価格目標(100ドル)を放棄し、「市場シェアの回復を狙おうとしている」というものだ。同国は2024年末まで、増産に力を入れるという。
価格目標が「非公式」とされるのには理由がある。この目標は、どんな形であれ、確定されたものではないためだ。分別ある市場評論家なら誰でも、世界の産油国は例外なく高値を望んでいると知っている。ただし、需要を低下させるほどの高値であってはならない。この観点からいくと、なぜサウジは、逆に価格を下げるような動きを見せているのだろうか?
しばしば目にする1バレル100ドルという価格は、サウジアラビアが収支を合わせるにはどれだけの石油価格が必要かに関する、国内外のアナリストによる試算に基づいている。
国際通貨基金(IMF)は2023年5月、閾値を80.90ドルと推定していた。しかしIMFは2024年4月、サウジアラビアの損益分岐点を、前年の値よりも19%高い96.20ドルに上方修正した。これは100ドルにかなり近い水準だが、現在の市況では極めて非現実的だ。
弱気市場は続く
現時点での石油価格は、2021年以来で最低水準となっている。主な原因は、世界需要の不確実性だ。強気の市場需要予測で知られる石油輸出国機構(OPEC)でさえ、2024年と2025年の需要は伸び悩むと予測している。国際エネルギー機関(IEA)の予測も悲観的だが、IEAとOPECの予測には、依然として大きなズレがある。2024年の追加需要について、IEAは日量100万バレル未満と予測しているが、OPECは日量200万バレル以上と見積もっている。