安住:そうなんだよね。自分のやりたいことをやるために、「ノー」と言える強いハートを持たないと。だから、自分の目指すところと違う結果になりそうなときは、「ちょっと違うと思います」と言ってましたね。あなたもそうだよね?
伊東:私も、変だなと思ったことがあれば、社内のかなり上の人にも言えるタイプでした。安住さんは、自分の思う正しいことを貫いていって、そこに周りがついてきた感じなんですか。
安住:そこまでではないけど、結局は自分のアイデアに従った方が辛くないから。たとえば「こういう結論に落とした方が面白いから」って言われても、「それでは自分の正義が成り立たないから勘弁してくれ(笑)」とお願いしたりしました。最終的にダメだったら組織を出なきゃいけないけど、8勝7敗でギリギリ気持ちがつながってきた感じかな。
蒸気機関車のような働き方
伊東:安住さんがすごいのは、アナウンサーの中で一番勉強していることだと思います。誰かにインタビューするときも、過去10年分の記事を読んだりして、とんでもない量の下準備をしてから臨むんです。この地位で、こんなにアナウンサーという仕事に誠心誠意向き合っている人がいるんだと衝撃を受けました。ただ、後輩の私にもそれが求められるから、後輩としては困りましたね(笑)
安住:会社の成績があまり良くない時代に入社したから、他局を追い越すには常にそれくらいやらなきゃと思っていたんだよね。
それに、アナウンサーは何かをつくっているわけではないし、人間性とか会話力とか、人間そのものを評価されているところがあるから、世の中から嫌われるのがすごくつらい。自分が生み出した作品が批判されるのとはまた違うから。常に社内外から評価されてて、それがモチベーションになってます。不思議な職業だよね。
伊東:そうですね。そんなストイックな働き方は、今も後輩に伝授しているんですか?
安住:してないね。働き方改革なので。
伊東:それを言われると何も言えなくなりますが……私は安住さんのストイックさを見られる環境で仕事ができて良かったと思ってます。アナウンサーを辞めて画家になった今も、このときに叩き上げられた根性が生きているので。
安住:たしかに入社5年10年で注意されたこととか、嫌われたこととか、自分がやらかしたミスとかは、やっぱり相当体に入ってるよね。