最後に発表された「GaaS(Golf as a Solution)」チームは、ゴルフを単なるスポーツとして捉えるのではなく、社会課題を解決するツールとして活用する視点を提案しました。地域経済の弱体化や地域リーダー不足といった課題に対し、ゴルフ場を地域リーダーシップやコミュニティづくりの拠点として活用することを目指しています。ゴルフを通じて、地域に新たな活力をもたらし、経済や文化の発展に貢献するというビジョンが描かれました。
初年度のトライアルで得た大きな学びは、多様な視点を取り入れ、従来の固定観念を打破することでゴルフ業界に新たな価値を創出できる可能性があることを確認できたことです。
2024年渋谷にて開催された「つなげる30人」主催のカンファレンスで登壇した廣兼氏は、「ゴルフという共通の趣味を持つ人々がリラックスした環境で集まり、対話を重ねることで、新たなビジネスチャンスや社会貢献のアイデアが生まれました」と述べ、木下氏も「異業種からの視点を取り入れることの重要性」を強調しました。
スポーツに変革を起こした成功事例
現在、第2期の企画(2025年1月開始予定)を考えるなかで、参考にしているのは、Bリーグやイングランドサッカー協会の事例です。ここで、それらの事例を紹介しつつ、第2期以降がどのようなイノベーションを起こす可能性があるのかを考察していきます。Bリーグ:地方連携とファンエンゲージメントでの育成
Bリーグは、各クラブが独自の収益源を持ち、地域との密接な連携を通じて、若手の育成とビジネスの持続性を両立してきました。2023-24シーズンのBリーグの観客動員数は約452万人に達し、地方自治体や企業との協力によって地域に根ざしたクラブ運営を実現しました。
Bリーグの成功は、ファンエンゲージメントの強化や、試合を超えたエンターテインメント価値の提供にあります。この取り組みは、ゴルフ業界にも応用できるでしょう。特に、地域との協力やファンとのつながりを強化することで、ゴルフ大会やツアー運営がより多様な収益モデルに成長する可能性があります。
イングランドサッカー協会:異業種の知見で固定観念を打破
もう一つの事例は、2016年にイングランドサッカー協会(FA)が取り入れた異業種の知見です。イングランド代表チームは長年、ワールドカップや欧州選手権で結果を残せず、PK戦の敗北が続いていました。この状況を打開するため、FAは卓球の元イングランド1位のマシュー・サイド氏や、IT起業家、元ラグビーイングランド代表のヘッドコーチなど、サッカー業界外の専門家を招集しました。
当初は「なぜ門外漢を招集するのか」と批判されましたが、この多様なメンバーが新しい視点をもたらし、育成方法やメンタル強化の面で大きな貢献を果たしました。サイド氏は、同じ業界内の専門家だけが集まっていたら、互いに同調し合い、固定観念が強化されるだけだったと指摘しています。この事例は、ゴルフ業界にも異業種からの視点を取り入れることで、新たなアイデアを生み出す可能性があることを示しています。