「彼は辞任すべきだ」とマスクは9月26日にX(旧ツイッター)に投稿した。
マスクは、ウィテカー長官がスペースXのロケット、スターシップの打ち上げを延期したことを非難した。FAAは、11月後半に打ち上げを許可したが、これはスペースXが希望した9月中旬から大幅に遅れた日程だ。
ウィテカー長官は、延期の理由の一部が、スペースXがロケットブースターが地球に帰還する際に発生させるソニックブーム(音速を超える際に発生する衝撃波)に関する環境分析結果を期限内に提出しなかったことにあると説明した。しかし、スペースXは、この問題は2カ月の遅延ではなく「書類のアップデート」で解決できるはずだと主張した。
この騒動は、イーロン・マスクとFAAとの間で発生した、打ち上げ日程の延期やそれに関連する違反に課された罰金を巡る激化する争いの最新の動きと言える。
マスクの「次期トランプ政権」での役割
また、この争いには、さらに別のレイヤーが加わっている。それは、マスクが今後、政府の規制者側に立つ可能性が浮上したことだ。トランプ前大統領は、11月の大統領選挙でホワイトハウスに復帰した場合に、マスクを「政府の効率化を担う委員会」のトップに起用する意向を表明している。この委員会は、連邦政府の内部パフォーマンスや財務監査を行うものだ。マスクは、「肩書きも報酬もなし」でその職務に就きたいと述べている。スペースXとFAAの争いは、マスクが「政府の効率化」に関心をもつ核心的な理由なのかもしれない。「我々は、残念なことに、打ち上げの許可を得るための政府の書類の作成に、ハードウェアの設計や製造よりも時間がかかるという現実に直面している。これは、アメリカが宇宙のリーダーとして地位を築くことを直接妨げるものだ」とスペースXは、FAAによる打ち上げの延期を非難する長文のブログ記事で述べていた。
大手企業が規制当局とやり合うことは珍しいことではない。しかし、マスクはXの2億人近いフォロワーとその煽動的な言動によって激しく争う姿勢を見せており、ここしばらくの間、Xでの一連の投稿や議会への書簡を通じて絶え間なく攻撃を仕掛けている。