米国では、過去20年間に石油業界を大きく変えた複数の重要な要因が基となり、原油生産量が急速に伸びている。
その大きな原動力となっているのがシェールオイルだ。水圧破砕法と水平掘削技術の進歩により、特に米国南部のテキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地などの地域で、シェール層(訳注:頁岩[けつがん]と呼ばれる岩石の層)に埋蔵する膨大な量の原油を採掘することができるようになった。こうした新たな技術により、かつては採掘に多額の費用がかかったシェール層の原油を回収できるようになり、生産量が大幅に増加した。
もう1つの重要な要因は、技術の進歩が果たす役割だ。掘削や採掘の技術が進歩したことで、坑井の生産性が向上した。つまり、生産者は既存の油田から、これまでより低コストでより多くの原油を生産できるようになったのだ。掘削精度の向上とデータ分析により操業の効率性が高まり、米国の原油生産は弾力的になり費用効率も高まった。
これに加え、設備投資も生産水準の向上を支える上で重要な役割を果たしてきた。パイプラインや製油所、輸出ターミナルの拡張により、大量の石油の輸送や処理が容易になり、生産者は国内外の需要を満たすことができるようになった。こうした設備により、米国は主要原油輸出国として台頭することとなった。
世界の石油需要も増産に拍車を掛けている。新型コロナウイルスの世界的な大流行による混乱から経済が回復するにつれ、特にアジアのような急成長している地域で石油消費が増加している。このため、世界の原油価格は生産者にとって健全な水準に保たれている。豊富な石油供給力を持つ米国は、原油輸出を増やしながら世界の需要の波に乗っている。
米国の規制環境も、業界にとっては好ましいものとなっている。近年のエネルギー政策は、国内資源の開発に対する補助金など、全般的に石油や天然ガスの探査を支援する方針で立てられてきた。こうした背景から生産者は操業を活発化させ、生産量が増加した。
最後に、原油価格の回復も増産を促している。新型コロナウイルスの世界的な流行で原油価格は急落したが、後に価格は回復し、以前は採算が取れなかった多くのプロジェクトが再び実行可能になった。原油価格の上昇に伴って生産者は原油の生産を再開し、新規プロジェクトへの投資も回復しつつあることから、米国の原油生産量は継続的に伸びている。
これらの要因が相まって、米国は記録的な原油生産量を達成し、世界のエネルギー市場のけん引役としての地位を確固たるものにしている。
(forbes.com 原文)