市場調査会社ユーロモニターによると、「世界で最も飲まれている酒」ともいわれる白酒の売上高は増加を続けており、2023年には中国国内だけでも、約1670億ドル(約24兆円)にのぼる。
歴史ある酒
中国の醸造所、1573年創業の瀘州老窖(ロシュウ ロウコウ、またはルージョウラオジャオ)が輸出向けに新たに創設したブランドの共同創業者、デレク・サンドハウスは、酒は中国文化において、先史時代から儀式的な役割を果たしてきたものであり、中でも白酒は「伝統的な宴会や祝いの席において、中心的な役割を担ってきた」と語る。数千年前から造られてきた白酒の初期の製造方法は、地域によって異なる。だが、最近では専門家による研究の結果、製造工程も、出来上がった白酒のランク付けの方法も、確立されている。「固体発酵」と蒸溜という独自の製法で生み出される白酒についての理解は、一層深まってきているという。
合理化され、効率化が図られてきた製造方法のおかげで、品質がより向上し、種類もより多くが生産されるようになっている。
独特の製法
白酒を特徴付けるのは、固体発酵と蒸留を用いる独特の製法だ。この酒を造る麹の「曲(チー)」は恐らく偶然に、およそ5000年前に作り出されたものだとされている。蒸した原料の穀類と水、曲を混ぜ、練り固めて成形し、管理された環境下で自然発酵させ、微生物(カビなどの菌)によって数日から数週間をかけて発酵させながら、穀類に含まれるでんぷんを糖化させる。
ビールやウイスキーなど、西洋で造られる穀類が原料の酒は、大半が液体の状態で糖化と発酵を段階的に行う。白酒がそれらの酒と大きく異なるのは、この点だ。
また、曲に使用する細菌はアルコールと混ざり合い、(有機化合物の)エステルとアルデヒドを形成する。それが、白酒に特有のフルーティーさや、フローラルなフレーバーをもたらしている。
白酒は、ワインの醸造における「テロワール」と似た概念を持つことも特徴の1つだ。曲の発酵には大気中の微生物が大きく影響を及ぼすことから、その風味は産地の自然環境に大きく左右される。
その後、発酵させた穀類がもろみに変化したら、点心を蒸すのに使用される蒸し器の形に似た大型の甑(こしき)を使い、蒸留によってアルコールを抽出する。こうしてできる無色透明の酒、白酒のアルコール度数は、大抵35~65%となる。
多様なフレーバーが特徴
強い香りと複雑な味で知られる白酒のフレーバーは、フルーティーからフローラル、素朴と表現されるものまで、実にさまざまだ。前出のサンドハウスは、「中国国内には何千もの醸造所がある。ほぼすべての人の好みに合った白酒があるはずだ」と語る。多様なフレーバーは、いくつかのカテゴリー(香型、シャンシン)に分類することができる。特に注目すべきものは、次の4種類といえるだろう。
・醤香(ジャンシャン)
「貴州茅台酒」などのように、芳醇な、醤油のようなうま味を感じられる。・濃香(ノンシャン)
瀘州老窖(永昌源)の「明江四川白酒」など、力強く、甘いフローラルな風味が特徴。・清香(チンシャン)
より繊細な、すっきりとした味わい。北部で造られる白酒に多い風味。・米香(ミーシャン)
日本酒のようにマイルドで、かすかな甘みが感じられる。南部で多く生産されているタイプ。(forbes.com 原文)