「暗号資産はもはや、主に投機の対象として取引される資産クラスから、日常的に活用されるものへと変わりつつある。世界中で約4億人が暗号資産を利用している」と彼は主張するが、ここには議論の余地があるだろう。
暗号資産に関して大半の人々が気にするのは、ここ最近急騰しているその価格だ。ビットコインは昨年から2倍以上に上昇し、9月26日現在で約5万8000ドルに達している。米国では540億ドル(約7兆8000億円)のデジタル資産を運用する20以上の暗号資産のETFが取引されている。この資産クラスはかつてないほど広く保有されており、11月の米大統領選挙においても重要な話題となっている。
暗号資産の取引所であるコインベースの株価はビットコイン価格の動きに連動しており、現在41歳のアームストロングは約78億ドル(約1兆1200億円)の資産を保有している。彼が12年前に共同創業した同社は現在、400億ドル(約5兆7600億円)の時価総額を誇り、2700億ドル(約38兆8600億円)相当の暗号資産を保有している。その中には、世界最大の暗号資産ETFのプロバイダーであるブラックロック向けの200億ドル(約2兆8800億円)を超える暗号資産が含まれている。
取引手数料で収入の約半分を得ているコインベースの2023年の収益は約31億ドル(約4460億円)で、純利益は9500万ドル(約140億円)だった。今年はさらに好調で、2024年上半期の収益は31億ドル(約4460億円)に達し、純利益は12億ドル(約1730億円)に急増した。
デジタル資産の世界で「大きすぎて潰せない」存在があるとすれば、それはコインベースだろう。同社は、発行済みのビットコイン全体の11%を保有しており、この分野で2番目に重要なコインのイーサリアムに関しては、その割合はさらに高く、全トークンの推定14%を占めている。もしもコインベースが崩壊したら、その影響は壊滅的かもしれない。
暗号資産の支持者たちは中央集権的な存在を嫌うが、コインベースはJPモルガンのような大手の金融機関に似ている。同社の主な事業は、取引やカストディ(資産保管)、そしてステーブルコインのUSDCをサークルと共同管理することであり、USDCトークンの価値を米ドルにペッグしている。
コインベースは、その支配的な立場を利用して他社よりも高い手数料を請求することが可能だ。コインベースでビットコインを5000ドル分購入すれば、90ドルの手数料がかかる。一方、クラーケンならば20ドルの手数料、ロビンフッドならば無料だ。