PS5 Pro予約開始も完売には至らず それでも「失敗」ではない理由

PlayStation 5 Pro (c)Sony Interactive Entertainment

予約受付が始まったソニーの新型ゲーム機「PlayStation 5 Pro」は、米国でも英国でも完売には至っていない──。この事実を指摘したオンラインメディア「The Verge」の編集者トム・ウォレンによるX(旧ツイッター)への投稿が、注目を集めている。実際に米国では今も、ソニーのサイトから予約が可能な状況で、ホリデーシーズンに向けてPS5 Proが品薄になることは考えにくい。

多くの人はこれを、699.99ドル(日本では税込11万9980円)という高価格のわりにはデモで示された性能向上が限定的だったことから、需要喚起に「失敗」したことの証だととらえている。しかし実際の状況は、もっと広い視点で考える必要がある。

・第1に、PS5初期モデルがあれほど品薄になったのは、新型コロナウイルス流行に伴うサプライチェーン(供給網)の混乱が原因だった。この問題はすでに解消されている。

・第2に、次世代機への中継ぎモデルとなるPS5 Proはそもそも、ターゲット層が限られた製品だ。また、出荷台数の「上限」が何台なのかがわからなければ、完売したかどうかはあまり意味がない。5万台で完売するかもしれないし、40万台売っても完売しないかもしれない。

・最後に、私の記憶が正しければ、前世代のPS4 Proが完売したことはなかったはずだ。それでもPS4 Proは「失敗」とはみなされなかった。

人々の頭にあるのは主に(1)PS5は発売当初の争奪戦により品切れが長い間続いたこと(2)最近予約が始まった30周年記念モデルが即座に完売したこと──の2つだろう。だが(1)は大規模な供給問題が起きているさなかに発売された次世代機だった、そして(2)はベースモデルのPS5 Proとは異なる数量限定モデルだった、という違いがある。

最終的にPS5 Proがどこまで売れるかはわからない。価格が高いことは事実であり、多くの地域では現行モデルとの価格差が非常に大きい。また、Proにアップグレードした場合にゲーム体験がどこまで向上するかを、ソニーは示し切れていない感もある。一定の向上があることは確かだが、説得力に欠ける。

それでも、ソニーが具体的にどれほどの販売台数やアップグレード率などを想定しているのかはわからない。前世代では、PS4総販売台数のうち、12%がProモデルだったとみられている。このことから、PS5所有者のアップグレード率は半分にも届かず、最終的にはPS4 Proと同程度になるのではないかと予測するアナリストもいる。

筆者自身は、購入の是非を決めかねているところだ。大きな判断材料となるのは、超期待作の『Grand Theft Auto VI』(GTA6)でどのようなPS5 Pro向けアップグレードが用意されているかだと思う。筆者は最近、PCでプレイできるゲームはほぼすべてPCでプレイしているので、PS5でプレイするものはPS独占タイトルのみだ。PS5でプレイしたいと思うタイトルは今のところそれほど多くないが、今後はそうしたものが出てくるかもしれない。しかし、今のベースモデルで物足りなさを感じたことはないし、700ドルはもっと別のものに使った方が有意義なように思える。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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