だが今後、その順位にくることはなさそうだ。ゲイツは依然として1070億ドル(約15兆3840億円)もの資産を保有しているが、フォーブスの今年のランキングでは前年の6位から9位に順位を落とした。純資産も1年前より40億ドル減っている。前年にはS&P500やナスダック100といった米国の株価指数が30%も上昇していたにもかかわらずだ。ゲイツは現在、世界の富豪ランキングで第12位で、1991年以来初めてトップ10から外れた。
順位を落とした主な理由は、27年間連れ添ったメリンダ・フレンチ・ゲイツとの2021年の離婚だ。
フレンチ・ゲイツは今年5月、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同会長を翌月に辞任すると発表した際、自身の慈善活動のために追加で125億ドルを受け取ることに言及した。その資金がどこから拠出されるのかや受け取り時期については明らかにしなかった。だがフォーブスは、その資金がゲイツ財団からではないことを突き止めた。ゲイツの個人資産からだった。ゲイツはすでに資金を譲渡したようだ。
フォーブスは、フレンチ・ゲイツが受け取った離婚慰謝料の推定額をこれまでの3倍近くに引き上げた。そしてゲイツの現在の資産に関する新たな情報に基づき、フレンチ・ゲイツの資産は1年前の103億ドルから大幅増の290億ドルと推定。これにより、フレンチ・ゲイツは米国の女性富豪ランキングで9位となった。カジノで財を成した夫の遺産を受け継いだミリアム・アデルソンに次ぐ順位だ。
ゲイツは2022年9月に開催された「フォーブス400慈善サミット」での多岐にわたるディスカッションで、フォーブスの富豪ランキングで自身が順位を落とすとの見通しを示していた。その際、フォーブスの富豪リストにランクインしなくなるまで寄付し続けるつもりだとも語っていた。ゲイツはまた、フレンチ・ゲイツと共に活動を続けないという「わずかな可能性」があり、その一方でゲイツ財団の運営はあと25年は続くと明言した。
フレンチ・ゲイツは自身が設立した投資・慈善活動を行う組織Pivotal Ventures(ピボタル・ベンチャーズ)を通じて「より多くの人々、特に女性の地位のさらなる向上」に力を注いでいる。ピボタル・ベンチャーズのウェブサイトによると、フレンチ・ゲイツは女性の力と影響力を拡大するために20億ドルを投じている。フレンチ・ゲイツは2022年にPivotal Philanthropies(ピボタル・フィランソロピー)財団を設立し、6億7400万ドル相当の上場株式で資金を賄った。同財団にはおそらく、フレンチ・ゲイツが今年5月に言及した125億ドルの一部が振り向けられるだろう。
フレンチ・ゲイツがゲイツ財団の共同会長を辞した今、一つの疑問が浮かぶ。フレンチ・ゲイツが注力する女性や家族の分野に、同財団は引き続き取り組むのだろうか。
ニューヨーク・マンハッタンで先週開催された、女性の経済的エンパワーメントをテーマにしたゲイツ財団のイベントで、同財団のマーク・スズマン最高経営責任者(CEO)はまさにその疑問を取り上げた。スズマンは「男女平等に向けた我々の取り組みは何も変わらない」「女性の経済的エンパワーメントに深く、持続的に焦点を当てている」と語った。
(forbes.com 原文)