北米

2024.10.01 12:30

米議会で検討の「対中ハイテク投資」規制案、年内の完成目指す動き

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年末が近づく中、米議会は中国の特定セクターへの対外投資を規制する法案を2025年度の国防権限法(NDAA)の一部として、再び成立させようとしている。議員らは、この法案をとりまく問題の解決に向けて動いてきたが、これまでのところ成果を上げられていない。しかし、今年は状況が変わる可能性がある。

最も具体的な提案は、上院版のNDAAの草案に含まれている。この提案は、米国企業が中国の先端半導体や人工知能(AI)、量子コンピューティング、極超音速兵器、衛星通信、LiDAR技術に関連する分野への投資を行う際に、その内容を開示することを義務付けるものだ。共和党のジョン・コーニン上院議員や民主党のボブ・ケイシー上院議員、共和党のダン・サリバン上院議員らが提唱した同様の措置は昨年、91対6の票差で上院を通過しており、新たな法案が上院で反対にあう可能性は低いと見られている。

しかし、上院でのほぼ全会一致の支持にもかかわらず、この法案は最終的なNDAAの文言から削除された。これは、下院金融サービス委員会のパトリック・マクヘンリー委員長を含む一部の主要な下院の共和党議員の反対を受けてのものだ。マクヘンリーは、セクターごとの禁止を定めるのではなく、特定の企業を対象に、より厳しい制約を課す制裁ベースのアプローチを主張している。

マクヘンリーは上院法案に対する見解を公には変更していないが、上院の提案を支持する共和党のマイケル・マコール下院外交委員長が、マクヘンリーが支持できる妥協案をまとめるための交渉を主導している。マコールは最近、ポリティコに対し、「交渉は良い方向に進んでいる」と述べていた。また、交渉に関与している共和党のアンディ・バー下院議員もポリティコに対し、これまでの議論よりも両者の距離は縮まっているとコメントしている。

議会は現在、大統領選挙の投票日の後まで休会しているため、進展があるとすれば、議員が11月中旬に戻ってきてからになる見通しだ。焦点となるのは、下院の共和党議員らが今年のNDAAにこの提案を含めるために歩み寄りを見せるかどうかだ。これらの交渉は、議会のレームダックセッションにおける注視すべき重要な議題となり、NDAAを巡る最も激しい議論のひとつとなる可能性がある。

これらの議会での交渉の背景には、財務省が対外投資規制案の完成を目指していることが挙げられる。昨年この規則の概要を発表したバイデン政権は、今年6月に正式に規制案を提出した。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、財務省は年内にこの規制案を完成させることを目指している。

次期政権に引き継がれる可能性

この規則は、提案通りであるならば、米国企業からの中国の半導体やマイクロエレクトロニクス、量子情報技術、AIにおける特定の投資をブロックすることになる。ただし、すべての投資が禁止されるわけではなく、一部の投資は政府への通知のみが必要となる。これは上院の提案が確立しようとしている仕組みと似たものだ。

財務省の規制案の完成は遅れる可能性があり、次期大統領の政権に引き継がれることも考えられるが、仮にトランプ政権が復活した場合は、いずれにせよ規制が改定される可能性もある。トランプは選挙戦で対外投資の制限よりも関税に注目しているものの、中国に対する強硬な姿勢を考えれば、より厳格な規制を設けることは容易に想像できる。そのため、トランプ政権の財務省が規制の対象セクターを拡大したり、投資をブロックできる基準を引き下げたりする可能性がある。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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