それらと同時に、米国では航空会社に対するクレームも過去最高を記録している。過去4年間で乗客からの苦情が4倍に増加し、2023年には6万1000件以上が記録された。
米国公共利益研究グループのディレクターであるテレサ・マレー氏によれば、「2023年の苦情は前年比で29パーセント増加したが、乗客数の増加は11パーセントに過ぎない」とし、このことは単に乗客が増えたためではなく、業界のプロセスに問題があることを示しているという。
日本人旅行客にも大きなメリット
航空業界は規制産業であるため、これらのクレームは政府への不満にもつながっている。そのためかバイデン政権は、アメリカの航空会社が3時間以上の遅延やキャンセルを引き起こした場合、強制的に乗客に返金を行わせる法案の成立を目指している。とはいえ、業界からの抵抗も強く、具体的な法案提出は来年1月以降となるため、大谷翔平選手のドジャースのポストシーズンには間に合わない見込みだが、これは米国航空行政にとって画期的な動きであり、日本人旅行客にとって大きな朗報となる。
例えば、航空チケットには多くの種類があり、同じエコノミークラスでも、日付変更が可能なものや不可能なもの、返金可能なものや不可能なものなど、種類によって制限はさまざまだ。格安航空券でアメリカに飛ぶ場合、それは現状たいてい「なにもできない」チケットだ。
これまでも遅延や欠航時には空港のカウンターで柔軟に対応してくれていたが、最大の問題は「返金不可のクラスには返金されない」という基本原則である。
多くの便が満席であるため、「次の便ですぐに」という日本の新幹線のような対応は難しく、翌日の便に振り替えられることが多いのが実情で、現在、米国の主要航空会社10社のうち、遅延やキャンセルに対して返金不可のチケットに現金で返金を行っている会社は存在しない。
こうした状況で、返金が可能になれば、他の航空会社に乗り換えることができるため、乗客にとってはとても便利である。
これは日本人旅行客にとって大きなメリットであり、特に太平洋路線で日本に帰国する際に、返金を受けて、他の便に乗り換えられるのはありがたいことだ。
国際線では、1つの航空会社の飛行機が、国内線のように頻繁に運航していることは稀だ。そこで返金を受けて、他の航空会社に変更し、ロサンゼルス経由を、サンフランシスコまたはシアトル経由で検索してみたり、到着を羽田から成田に変更したり、またはバンクーバーやホノルル、ソウルでの経由便を利用したりすることで、選択肢が増える。
また、顧客に対して宿泊券や食事券を提供するというこれまでのルールも、新しい法案では強化される見込みだ。