ファッション

2024.10.12 15:00

職人への敬意が宿る贈り物。進むべき道しるべに:The Gift (山木和人 シグマ)

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。


THE GIFT #16

山木和人

シグマ代表取締役社長

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1883年に創業した英国の生地メーカー「テイラー&ロッジ」にアーモリーが別注した生地。
極上の滑らかさを持つ生地を、クラシックに忠実なつくりのオーソドックスなシングル・スリーピースに仕立てた。

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以前、雑誌の取材で友人にシグマの会津工場を案内した。その友人とは、香港やNYに店舗を構える紳士服ブティック「アーモリー」のオーナー、マーク・チョー氏だ。彼はメンズファッションのみならず時計やカメラにも造詣が深く、根底には職人への敬意があった。会津工場では手作業の多いレンズ製造の工程を目にし、そのクラフトマンシップに感銘を受けたという。そして、訪問のお礼にと贈られたのがスーツ生地だ。1883年に創業した英国の生地メーカー「テイラー&ロッジ」にアーモリーが別注したもので、伝統的なつくりが最高峰の製織所で再現されている。英国の生地職人、そして会津のレンズ職人への深い敬意が感じられるこの生地を、私は日本屈指のテーラーである大島崇照氏に仕立ててもらった。このスーツを会津工場の操業50周年記念式典で着用できたのは、良い思い出だ。
 
この贈り物は、マークが感銘を受けた会津の職人技術と精神を今後も継続・発展させることこそが、これから私たちが存続し革新的な製品を生み出すために重要であることを再認識させてくれた。そしてスーツを着るたび、私はその思いを強くするのである。


やまき・かずと◎1968年生まれ。上智大学大学院を修了後、1993年にシグマに入社。2000年取締役経営企画室長を経て、03年取締役副社長、05年取締役社長、12年より現職。メイド・イン・会津にこだわり、ものづくりへの高い意識と職人技術が世界から評価される同社の陣頭に立つ。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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