ビジネス

2015.08.04

ビッグデータ解析が自動車保険を変える Driveway社の野望

GalinaVdovenko / Bigstock


自動車保険の分野で定番となっているのが無事故割り引きだが、この分野にもイノベーションの波が押し寄せている。GM車に搭載されているOnStarを筆頭に様々な車載型トラッキングツールが保険会社と連携し、ドライバーの運転行動を分析している。

その一方、スマートフォンを利用したドライバーの安全度を評価する仕組みを考案したのが、シリコンバレーに本拠を置くDriveway Software社だ。これまでに25万人近くのドライバーの情報を収集した同社は、中規模な保険事業者向けの需要を狙っている。ただし、長いスパンでは同社の野望はもっと大きなものだ。今後はUberやLyftのような配車サービスに運転者情報を提供し、最終的には無人自動車が実用化された際に到来するビッグデータビジネスでの勝者の座を狙っている。

「我々はある人物がどのような運転行動をするかのリスク要因を可視化し、保険会社の価格設定を手助けします」と副社長のロマン・グルコフスキーは語る。現状の保険システムは少数の悪質な運転手らが保険料を高くする要因となっているが、同社の仕組みを導入すれば圧倒的多数(同社によれば89%)のドライバーがその恩恵を享受すると彼は主張する。

Drivewayはこれまでに5億マイル以上の運転を追跡した。しかし、これは大手自動車メーカーらとの公式な関係を持たずに行われたものだ。今後の事業拡大に向けて同社はチェルシーFCのオーナーとして知られるロシアの資産家、ロマン・アブラモビッチ氏らから1000万ドル(約12億4千万円)を調達した。

Driveway社CEOのカッツマンはフォーブスの取材に対し、「我が社の製品は競合他社に打ち勝つことができる。我々は2011年以来、研究を重ねた結果、既に700以上のアルゴリズムを所有している」と伝えた。これまでの課題はスマホのバッテリー消費を抑えつつ、アプリ単体で全てのトラッキング動作を行うことだった。既存の保険会社らはみな、小さなポケベルのようなデバイスをユーザーらに配布している。カッツマンは「この機能の実現のためには非常に複雑な設計が必要だった」と述べている。

数百万ドルの資金調達に伴い、今後数ヶ月間でDrivewayは社員数を20人から40人へと倍増する。カリフォルニア州サンマテオに初の営業チームを編成し、大手保険会社やUberなどの企業に働きかけを行い、保険コストの削減が可能であることを提案する。同社の予測では、ユーザーらが自分達の運転行動を追跡して欲しいと言い出すのは時間の問題だという。

Driveway社副社長のグルコフスキーは「ビッグデータ解析が保険業界において本格的に実用化される段階が近づいた。これはとても大きな市場で、数年で巨大な変化が訪れるだろう」と述べている。

文=アレックス・コンラッド(Forbes)/ 編集=上田裕資

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