約6600万年前、直径10kmの「惑星破壊級」小惑星が地球に衝突した。このチチュルブ天体衝突によって地球規模の大量絶滅が発生し、全生物種のうちの恐竜を含む推定76%が絶滅した。
チチュルブサイズの小惑星が地球に衝突する確率は1億年~2億年に1回で、より小規模な衝突ほど発生頻度が高くなる。
地球近傍天体(NEO)の危険度リストには現在、約1200個の小惑星が登録されている。このリストには、理論上は今後1000年以内に地球に衝突する可能性のある直径1km以上の天体が記載されている。これらのNEOは、世界規模の破壊を引き起こすには小さすぎるものの、特定の地域全体を壊滅させるには十分な大きさだ。
こうした脅威を無力化するために提案されている防御機構として、宇宙機を用いて小惑星に衝突させるか、小惑星表面で爆弾を爆発させる方法がある。理論上、この衝撃の運動エネルギーを利用すれば、小惑星を地球と衝突する進路から押し出すことができるかもしれない。2022年に実施された二重小惑星方向転換試験(DART)では、直径150mの小惑星ディモルフォスの軌道を変えることに成功した。
より大型の天体に対しては、核兵器の利用が提案されている。核爆弾を爆発させれば、小惑星の一部を細かく砕き、より小さな破片にして、完全に地球に当たらないか、大気圏で燃え尽きるようにすることが可能と考えられる。しかしながら、小惑星が緩く集積した物質でできている場合は、衝撃波を吸収するだけで、小惑星の運動には影響が及ばない可能性がある。
米ニューメキシコ州アルバカーキにあるサンディア国立研究所のネイサン・W・ムーア率いる研究チームは今回の研究で、これに代わる仕組みを提案している。小惑星を完全に破壊するのではなく、核爆弾を小惑星の表面近くで爆発させる方法だ。核爆発で放出される高エネルギーX線で表面物質を蒸発させ、このガスの急速膨張をロケットの推力のように使って小惑星を押し進めるのだ。