プラスチックは本当に気候変動の「悪者」なのか? 

悪者扱いされているプラスチック製容器(Shutterstock)

強硬派の環境保護論者の目から見れば、プラスチックほど極悪な製品は他にほとんどないだろう。

プラスチックはリサイクルが難しい、と環境保護論者たちは訴える。プラスチックの製造では大量の二酸化炭素が排出される。それは温室効果ガス排出量の5%以上を占め、地球に温暖化という悪影響をおよぼす。それゆえに、プラスチックには邪悪なイメージがつきまとい、その使用を禁止または大幅に削減せよという運動が続けられている。プラスチック製のカップ、ストロー、レジ袋などは、その明白な標的にされている。

社会主義者的な考え方をする国連は、プラスチック汚染に対処するための国際的な条約交渉を進めており、2024年内の合意を目指している。しかし、温室効果ガス排出量について言えば、プラスチックに反対する意見は、プラスチックのように「うわべだけで実態がない」ということが判明しているのだ。

環境問題の専門家であるロナルド・ベイリーは、最近『Reason』誌に掲載された「プラスチックはアルミやガラスよりも気候のために良い」と題する記事で、「プラスチックとその代替品に関する議論が続いているが、重要なのは私たちの選択が環境に与える影響をすべて考慮し、温室効果ガス排出量を実際に削減する技術革新を取り入れることだ」と指摘している。

論文審査のある学術誌『Environmental Science & Technology』に掲載された新しい研究では、「プラスチックを(ガラスやアルミなどの)代替品に置き換えることは、ほとんどの場合、温室効果ガスの排出を悪化させる」ことがわかった。その差は非常に大きくなる場合もある。

ポリ袋と紙袋を比較してみよう。紙袋の製造ではポリ袋の最大5倍もの温室効果ガスが排出される。アルミ缶やガラス瓶をプラスチック容器と比較するとどうだろうか。製造時に排出される温室効果ガスの量は同等でも僅差でもない。アルミ缶はプラスチックの2倍、ガラス瓶は3倍も多いのだ。木製のダイニングセットをプラスチック製と比べると、温室効果ガス排出量には2倍の差がある。

それなのになぜ、プラチックのほうが悪者扱いされているのだろうか。その理由は、温室効果ガスの排出量を評価する際に、製品の製造から使用後の廃棄まで、全体のサイクルを考慮に入れていないからだ。例えば、輸送もその要素の1つである。紙袋は同数のポリ袋より重量が6倍も重い。

全体のサイクルを無視した奇妙な近視眼的意見は、大量消費国の政府による気候変動対策全体に影響をおよぼしている。例えば、いわゆる再生可能エネルギーが環境に良いという主張も、最初から最後まで評価すればその根拠は消え失せる。莫大な経費、天候に左右される不確実性、膨大な機会費用(他のことに使えたはずの費用。例えば、太陽光発電施設を建築しなければ、その費用を川の水をきれいにするために使えた、など)を考慮に入れれば、太陽光パネルや風力発電用風車のように大規模な設備が必要な代替エネルギーの正当性は、灼熱の砂漠に吸い込まれる水のように消え失せてしまう。

国連のプラスチックに関する条約策定計画は、実は現代社会主義の1つの実践であり、実際の所有権ではなく広範な規制によって、各国政府がさらなる経済力を手に入れるということになる。この場合、国連自身が言うように、条約は「製造から設計、廃棄まで含めた、プラスチックのライフサイクル全体に対処する包括的な取り組み」であるべきだ。

これは言い換えれば、世界の官僚がどのようなプラスチックをどれだけ製造するかを決定するようになるということなのだ。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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