ウェブや発表会の情報で知ることができる情報は一部で、実際に使い始めると秘密か隠れているのはいつものことだが、今回はいくつか驚かされたことがある。それはスペックの向上や機能の追加ではない。
スマートフォンが、写真や動画あるいはオーディオをデジタル情報へと取り込み、再生するデバイスとして、最も多く利用される機器であることに疑いの余地はない。iPhoneが優れているのは、そのそれぞれについて妥協していないことだ。
今回もディスプレイは、それぞれの価格帯でトップクラスなだけではなく、よく調整された的確な色再現が可能だし、録音をした場合でも、まるで専用のレコーダとマイクを使ったかのような品質で、それぞれに世代ごと少しずつアップデートしている。
この改善の繰り返しが、成熟したスマートフォン市場において「何年かに一度、買い換える」ユーザーが、再びiPhoneを購入する理由になっているが、さすがにカメラの画質で感心されることは、あまりないのでは? と思っていた。
しかし、そんな筆者の予断とは裏腹にiPhone 16 Proは順調に改善を重ねただけではなく、まだこの先にも「改良の余地」があることを示唆していた。
期待以上だったカメラの向上
iPhone 16と16 Proの間に、どのぐらいの違いがあるのかが気になっている方も多いだろう。少しだけ触れておくと、両者の日常での使いやすさの違いは、超広角カメラの違いがもたらしている(もちろん望遠カメラの有無もあるが)。
iPhone 16の超広角カメラにもマクロ機能とオートフォーカスが加わり、機能的にはiPhone 15 Proと同じになったわけだが、iPhone 16 Proの超広角カメラには広角カメラと同じく4800万画素になっている。
これにより1倍、2倍カメラ時のマクロ撮影画質が向上している。超広角カメラで捉えたマクロ画像を切り抜いて作られるため、画質を落としたくないが故にマクロ機能を手動でオフにして、ピント位置を目視で調整しながら撮影するといったテクニックは、もう必要だとは思わない。
超広角と広角カメラの中間画角域でも、両方の4800万画素センサーの情報を合成して生成できる。実際にどのような状況で、どのセンサーのどの情報を使うかは、自動的に判別と処理が行われているため、ユーザーが意識する必要はない。
16 Proの広角カメラはセンサー自身が大きいため、厳密な比較は無意味だが、超広角カメラの画素数向上は画質向上に大きく寄与しているはずだ。
しかし、それだけが理由ではない。
イメージセンサーの情報を処理し、最終的に画像データに落とし込む処理パイプラインを最適化し、情報精度を失わないよう再設計が行われていう。iPhone 16/16 Proではフォトグラフスタイルが見直され、バリエーションが多く用意され、細かな調整も行いやすく、後からスタイルを調整、選択し直すことができるが、これもパイプライン見直しがあったからだ。