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2024.09.28 12:00

iPhoneカメラに「まだ先がある」と証明したアップル

実際にアップルがそうした望遠カメラを搭載するかどうかはわからないが、他にもLiDARの改良とその応用など、センサーのアップデートと信号処理、アプリケーションの改良で、さまざまな価値を見出せる可能性が今回の改良で見えてきたように思う。

写真画質の話ではないが、動画撮影時に使える「オーディオミックス」はそうした改良の結果、生み出されたものだ。実はiPhone 16/16 Pro(両方で利用できる)の追加機能の中で、もっとも驚きを感じるものだった。

次の時代を創る「+AI」

オーディオミックスとは、動画の音声トラックにおいて、人の声に対して効果的な処理を行うものだ。

たとえば「スタジオ」モードで処理を行うと、まるでラジオの収録ブースで撮影したような音声になる。もちろん限界はあり、うるさい街中や混雑するカフェでの収録ではノイズが残り、調整でノイズを抑えすぎると音声の雰囲気が変わる。

しかし比較的静か、しかし完全な防音ではない、あるいは空調の音がやや気になる程度ならば、スタジオライクな音声に感じるレベルにまで品質を高めてくれる。

喧騒の中での収録ならば、シネマティックがおすすめだ。声が映画のセリフのように前面に出され、背景ノイズは自然に抑え気味となる。iPhone 16 Proならば、空間オーディオ収録も可能なため、環境音を空間オーディオで残しながらセリフが浮き上がる、極めて「エモく」て「シズル感」ある動画に仕上がる。

これが自動で程よく仕上がるのは、推論処理による的確な音声の分離と、どの程度が具合が良いのかを機械学習させているからだ。もちろん、マルチマイクからの信号を適切に処理して、高音質な収録が行えることは大前提だろう。

オンデバイスでのAI処理が進んでいる中、「ハードウェア+信号処理+ソフトウェア」にとどまらず、現在はすでに「ハードウェア+信号処理+ソフトウェア+AI」の時代に突入している。

過去数年のスマートフォンの進化を支えてきた、カメラのグレードアップという軸は今後もまだ続きそうだが、それらに加えて新しい驚きをこの後の数年でも体験し続けることができそうだ。

編集=安井克至

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