投資家の見方
だが数字や大きな取引が取り沙汰される裏で、起業家らは本当に防衛分野に興味を持っているのだろうか。結局のところ、防衛産業は一筋縄ではいかない産業であり、政府がどれだけ予算をあてるかに市場は多かれ少なかれ左右される。これはヘリウイも認めるところだ。「投資家としては、最高の製品を開発するチームを支援するという考えが真っ当だ」とヘリウイは話す。「防衛分野においては、最高の製品やマーケティングだけでは十分ではない。政府による調達というハードルもある。政府への販売を目指す企業は調達という課題に取り組まなければならない」
公共部門の調達はいかにもお役所仕事で時間がかかることがあり、投資家はうんざりすることもある。アレックス・ケーホーは、脅威を特定して識別できるよう、ドローンやセキュリティシステムに搭載されているカメラの能力を向上させる、AIを活用したソフトウェアを提供するVizgard(ビズガード)の創業者だ。このソフトはさまざまなハードウェアで使用できるとケーホーは強調する。 ケーホーも認めているように、市場投入までの道のりは困難なものになるかもしれない。例えば、公共部門のバイヤーが製品を気に入り、その姿勢は2年後も変わらないかもしれないが、製品購入には至っていない、ということもあり得る。
だがケーホーによれば、VCは防衛分野への投資に積極的になってきている。ケーホーは自社の資金調達を引き合いに出した。Britbots(ブリットボット)というファンドから少額の資金を迅速に調達したビズガードはプレシードラウンドで苦戦し、完了までに約1年を要した。だがその後、投資家の意欲は大きく向上した。「今年資金を調達したとき、ラウンドはほぼ即座にクローズした」という。
政府機関
英国では政府機関からの支援もある。ケーホーは国防省が運営する国防・セキュリティアクセラレーター(DASA)と、内務省が運営するアクセラレーティッド・ケイパビリティ・エンバイロメント(ACE)を挙げる。ビズガードはこの2つのプログラムの支援を受け、顧客からの受注を確保している。政府の支援は不可欠だとヘリウイは言う。「スタートアップは自力では成功できない。防衛産業は非常に規制されている。スタートアップは政府や大手防衛企業と協力すべきだ」
それは、9月26、27日にロンドンで開催された防衛分野のカンファレンス、『レジリエンス・カンファレンス』のテーマでもあった。この会議の目的は、世界的に緊張が極めて高まっている今、防衛とレジリエンスについて議論することだとうたわれたが、業界の大物や議員、スタートアップが参加し、接点が生まれる機会でもあった。
ゼネラル・カタリストの欧州担当マネージングディレクターを務めるジャネット・ゼ・ファーステンバーグはこの会議についての声明で、欧州の防衛能力を強化する取り組みにスタートアップを取り込む必要性を強調した。「最新の防衛ソフトウェアスタックを構築して、安全保障を強化することが急務だ」「スタートアップにはこの点において、敏捷性と緊急性、そしてテック面での深い専門知識をもたらすという重要な役割がある」と主張した。
(forbes.com 原文)